研究課題
機能性食品成分として知られているケルセチンやカテキン類のグルクロン酸抱合体及び硫酸抱合体を、遺伝子改変酵母を用いて大量に調製できるシステムの構築を目指す。グルクロン酸抱合体に関しては、酵母にUDP-グルコース脱水素酵素を同時に導入することによりグルコースからのUDP-グルクロン酸供給を可能にする。また、硫酸抱合体に関してはヒト由来活性硫酸(PAPS)合成酵素を同時に導入して硫酸抱合能の強化を図る。さらに抱合体の合成効率を増強するために、基質取り込みのトランスポーター及び抱合体排泄のトランスポーターなどの遺伝子導入をおこなうことにより、抱合体産生に特化した遺伝子改変酵母の創出を目指す。1)グルクロン酸転移酵素(UGT)及びUDP-グルコース脱水素酵素(UGDH)同時発現酵母株の構築:これまでに構築したものを含めてUGT分子種としてはヒト13種、ラット10種、マウス6種を選定し、酵母遺伝子への導入は染色体組み込み型ベクターを用いてUGDH遺伝子との同時発現株を構築した。選択培地にて選別した酵母株についてはUGT及びUGDH発現量をウエスタンブロット法にて確認した。2)トランスポーター遺伝子導入による抱合体産生能力増強酵母株の構築:菌体外への排泄促進には同様に肝臓で抱合体の能動的な輸送に関与するABCトランスポーター(ABCC2)遺伝子を導入することにより菌体外への排泄を促進することに成功した。3)遺伝子改変酵母株を用いたケルセチン部位特異的な抱合体調製の検討:分子種はケルセチンの特異的な水酸基に抱合能を示すことが知られており、例えばUGT1A8を用いるとB環の3‘位抱合体を優先的生合成することが可能である。部位特異的な抱合分子種を選定して、培養条件及び酵素反応条件を検討して最大収量が得られる条件を決定した。
2: おおむね順調に進展している
初年度においては以下の通りの研究計画に対して、つぎの成果が得られた。1)グルクロン酸転移酵素(UGT)及びUDP-グルコース脱水素酵素(UGDH)同時発現酵母株の構築:これまでに構築したものを含めてUGT分子種としてはヒト13種、ラット10種、マウス6種を選定し、酵母遺伝子への導入は染色体組み込み型ベクターを用いてUGDH遺伝子との同時発現株を構築し、それぞれについて抱合体生成能が確認された。2)トランスポーター遺伝子導入による抱合体産生能力増強酵母株の構築:菌体外への排泄促進には同様に肝臓で抱合体の能動的な輸送に関与するABCトランスポーター(ABCC2)遺伝子を導入することにより菌体外への排泄を促進することに成功した。3)遺伝子改変酵母株を用いたケルセチン部位特異的な抱合体調製の検討:UGT分子種はケルセチンの特異的な水酸基に抱合能を示すことが知られており、例えばUGT1A8を用いるとB環の3‘位抱合体を優先的生合成することが可能である。部位特異的な抱合分子種を選定して、培養条件及び酵素反応条件を検討して最大収量が得られる条件を決定した。以上の通り、本申請初年度においては当初の計画通り進行している。
今後は当初の申請通り、次年度以降はグルクロン酸抱合体調製システムの改良充実とともに食品成分の代謝物として次に重要な硫酸抱合体調製システムの開発に取り組む。最終年度には最適条件下における両抱合体調製システムによる主要な機能性成分抱合体の大量合成を行なう。1)ヒト由来硫酸抱合酵素(SULT)及び活性硫酸合成酵素遺伝子のクローニング及び酵母発現系の構築:ヒトの主要な分子種であるSULT5種(1A1, 1A3, 1B1, 1E1, 2A1)及び活性硫酸(PAPS)合成酵素を選定し、遺伝子クローニング及び酵母発現系を構築する。酵母遺伝子への導入は染色体組み込み型ベクターを用いてPAPS合成酵素遺伝子との同時発現株を構築する。選択培地にて選別した酵母株についてはSULT及びPASP発現量をウエスタンブロット法にて確認する。2)遺伝子改変酵母株を用いたカテキン部位特異的な抱合体調製の検討:初年度に開発したトランスポート機能強化酵母株を用いて硫酸抱合体生成能の増強を図る。硫酸抱合体に関してはグルクロン酸抱合体とトランスポーター分子種が異なる可能性があるため複数の分子種(ABCG2,ABCC3)についても発現検討をおこなう。3)さまざまな食品成分抱合体大量調製の検討:食品機能性成分のモデル化合物としてケルセチンとエピガロカテキンを用いてさまざまなヒトUGT分子種及びSULT分子種により抱合体調製の検討を行い、数十から数百mgスケールの合成を目指す。とくにケルセチンは複数の水酸基を有し4種の抱合体が生成されることから、異なる分子種を用いることにより特定の部位が抱合化された代謝物を調製することができ、代謝物である抱合体の持つ機能性及び体内動態に関する知見が得られると期待される。
本申請年度において計上していた物品費用のうち、酵母培養試薬については培地組成の試薬を混合することにより、既存培地よりも大幅にコストダウンを可能にしたため、当初の予算を下回る結果となった。 次年度の研究費の使用計画としては、本年度申請予算と合わせて実験試薬(遺伝子工学試薬、培養試薬など)などの消耗品を中心に物品費として使用する。
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http://www.pu-toyama.ac.jp/BR/sakaki/