研究課題/領域番号 |
23580180
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
熊澤 茂則 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (10295561)
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研究分担者 |
杉山 靖正 鹿児島大学, 水産学部, 准教授 (90347386)
太田 敏郎 静岡県立大学, その他の研究科, 助教 (40285193)
中村 純 玉川大学, 付置研究所, 教授 (30256002)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | プロポリス / 起源植物 / ミツバチ / 済州島 / 明日葉 / カルコン |
研究概要 |
ミツバチの生産物であるプロポリスは、現在、健康食品素材として広く利用されている。プロポリスの原料は樹脂などの植物由来物質であるが、実際の成分組成はミツバチが利用する植物種(起源植物)によって異なる。そこで本研究では、プロポリスの起源植物を化学的および生物学的アプローチから解明することを目的とした。特に、プロポリスや起源植物、さらにそこから単離、同定した成分についてガン血管新生抑制活性を中心とした生理活性評価を行い、最終的にはプロポリスの機能性に物質レベルでの科学的根拠を与えることを目標とした。本年度は、主に韓国産プロポリスとソロモン諸島産プロポリスを対象に研究を進めた。まず韓国の様々な地域のプロポリスについて構成成分を調べたところ、済州島産プロポリスが韓国の他産地のプロポリスと異なる成分組成を有することが明らかとなった。そこで、済州島産プロポリスの詳細な成分研究を行い、8個の新規カルコン類と19個の既知化合物を同定した。既知化合物の大半は明日葉(Angelica keiskei)の含有成分として報告されていたため、済州島産プロポリスの起源植物は明日葉である可能性が強く示唆された。そして済州島現地で調査を行った結果、起源植物として推測された明日葉の傷や茎の切断面から滲出する乳液を集めるミツバチの観察に成功した。さらに、済州島産プロポリスと明日葉乳液の成分組成の一致を確認し、同プロポリスの起源植物を明日葉と同定した。明日葉がプロポリスの起源植物であるという知見は、本研究ではじめて得られたものであった。一方で、ソロモン諸島で採集されるプロポリスについても成分研究を行った。その結果、新規化合物を含むいくつかのプレニルフラボノイドを同定し、ソロモン諸島産プロポリスは新たなタイプのプロポリスであることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究計画としては、韓国済州島やソロモン諸島産に代表される特異な成分組成を有するプロポリスについて、詳細な構成成分を明らかにし、起源植物を解明することにあった。韓国済州島産プロポリスについては、新規化合物を複数個同定し、起源植物が明日葉であることを解明することにも成功した。起源植物は明日葉であったが、明日葉がプロポリスの起源植物の一つとして利用されているという研究報告はこれまでになく、今回の研究により、新たな知見が得られた。この研究成果は、学術的に新規性があるだけでなく、済州島でのプロポリス生産における品質管理に役立てられるため、済州島の養蜂産業の発展につながる成果であることが期待された。なお、これらの研究成果については、いくつかの学会で発表し、2012年度(平成24年度)日本農芸化学会本大会においては学会のトピックス賞にも選出された。さらに、成分研究結果に関しては、Phytochemistry誌に投稿、受理され、印刷中である(2012年公表予定)。一方、ソロモン諸島産プロポリスについても、新規なプレニルフラボノイド化合物を見出し、その研究結果は日本農芸化学会をはじめとするいくつかの学会で発表した。特に第13回静岡ライフサイエンスシンポジウムにおいては、ソロモン産プロポリスに関する本研究成果は最優秀研究発表賞に選ばれた。そして研究成果の一部はすでに、Biosciences, Biotechnology, and Biochemistry誌に投稿し、受理されている(2012年公表予定)。 以上のことから、本研究課題については、特に化学的な面からの研究アプローチは非常に順調に進展していると判断してよいと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度では化学的な面からの研究を中心に実施した。今後においても、プロポリスの成分化学的な研究は引き続き行う。一方で、プロポリスの生理機能研究に関しても注力する。特に起源植物を解明した韓国済州島産プロポリスについては、他地域産プロポリスには見られない特異的な生理機能を検討する予定である。具体的には、当該年度の予備検討において、済州島産プロポリスに、神経成長因子(NGF)産生促進作用を見出していたため、今後培養細胞を利用してプロポリスより単離した成分についても、その機能性を詳細に検討し、構造活性相関的な考察を行う。NGFの脳内注入はアルツハイマー型認知症(AD)モデル動物の健忘を改善するため、脳内のNGF産生を促進する食品にはAD治療効果が期待されている。そのため、本研究成果は済州島産プロポリスに付加価値を付けることができるだけでなく、AD治療につながる新たな生理機能を有するプロポリス開発にも結びつくことが期待される。一方で、ソロモン諸島産プロポリスについては、当該年度の研究で抗酸化活性は確認していたが、今後は抗菌活性やガン血管新生抑制活性に関しても評価を行う。抗菌活性については、Bacillus subtilis、Staphyrococcus aureus、Pseudomonas aeruginosaなどの、グラム陽性および陰性細菌をはじめとする様々な細菌に対する活性を評価する。ガン血管新生抑制活性に関しては、培養細胞を用いる評価だけでなく、in vivoにおける評価も進める。これらの結果から、フラボノイド骨格におけるプレニル基またはゲラニル基の置換位置の違いが生理機能に与える影響について解明を進める。このような生理機能評価を行うことで、他産地のプロポリスとは異なるソロモン諸島産プロポリス独特の特徴が明らかとなると思われる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度において、3月末に学会出張等があったため、旅費の一部が次年度に回っている。 その他の次年度の使用計画に関しては、当該年度とほとんど同様である。主な研究経費として必要となるのは、薬品類や実験用器具類などの消耗品が中心である。具体的には、薬品類では、成分分析の際に用いる有機溶媒や検出用試薬、生理活性評価に用いる試薬やキットなどである。器具類としては、ビーカーやフラスコなどの一般的なガラス器具の他、プレート、チップ、チューブなどのプラスチック器具などが挙げられる。生理活性評価においては、培養細胞を用いるため、当然それにかかる経費も必要となる。なお、研究分担者の一人(中村)はミツバチを用いて研究を実施するが、そのための経費も必要である。また、旅費については、研究代表者が研究分担者の所属している玉川大学(中村)および鹿児島大学(杉山)に出向いて研究打合せや共同実験を行う際に必要となる他、日本農芸化学会や日本食品科学工学会などの学会で、年間2~3回程度の成果発表に使用するために必要となる。
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