研究課題/領域番号 |
23580182
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
山地 亮一 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (00244666)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 筋形成 / エストロゲン / エストロゲン受容体 / ユビキチン化 / 脱ユビキチン化酵素 |
研究概要 |
骨格筋は物理的運動に限らず、糖代謝も担うことから、骨格筋量の維持・増強は運動障害の予防だけでなく、糖尿病のような糖代謝疾患の予防にも重要である。骨格筋量は男女間で差があることから性ホルモンが関与していると推測されているが、詳細は不明である。骨格筋形成は、サテライト細胞から分化した筋芽細胞が細胞融合して多核化した筋管細胞へ分化するという特徴的な過程を経る。本研究では、女性ホルモン(エストロゲン、E2)や大豆イソフラボンのようなエストロゲン様生理活性を持つ物質(植物エストロゲン)が筋形成にどのような効果を及ぼすかを明らかにすることを目的とし、今年度はE2の筋形成に及ぼす効果を検証したところ、E2は筋芽細胞の筋菅細胞への分化を抑制することを見いだした。E2は特異的な受容体(エストロゲン受容体、ER)と結合すると、標的遺伝子に存在するエストロゲン応答配列上で標的遺伝子の発現亢進に寄与する。ERには2つのアイソフォームERαとERβが存在し、互いに拮抗的に働くと考えられている。E2は筋芽細胞の筋菅細胞への分化を抑制し、ERアンタゴニストはE2による筋分化抑制を解除した。E2は筋分化中に脱ユビキチン化酵素19(USP19)の発現を誘導した。卵巣摘出マウスへのE2補充療法はヒラメ筋と腓腹筋でUSP19の発現を上昇させた。USP19のノックダウンはE2が抑制した筋分化を阻害し、またE2で減少したユビキチン化タンパク質レベルを増加させた。ERαアゴニストはE2と同様の効果を示し、また筋菅細胞でのERαの高発現はE2の効果を促進した。一方でERβを高発現させたところ、E2の効果は抑制された。これらの結果から、E2はERαを介してUSP19の発現を誘導し、また増加したUSP19による脱ユビキチン化活性は筋形成を抑制し、さらにERβがERαで活性化したUSP19の発現を阻害することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は予想を上回って、動物実験データも取得することができ、さらに仮説通りに実験が進んだ。その結果、研究成果を学術雑誌(J. Biol. Chem.)に投稿し、受理される段階まで進んだから。
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今後の研究の推進方策 |
エストロゲンによる脱ユビキチン化酵素19(USP19)の発現調節機構を解明するために、USP19のプロモーター解析を行い、USP19の発現調節がエストロゲン受容体の制御下にあることを検証する。次にUSP19による筋分化抑制機構を解明するため、USP19の基質を同定し、USP19による基質タンパク質の脱ユビキチン化反応機構を解析するとともに、基質タンパク質の筋形成における機能を明らかにする。さらに植物エストロゲンによるUSP19発現調節機構を解明するために、マウス骨格筋でのUSP19の発現を時空間的に解析するとともに、筋形成あるいは筋萎縮時のUSP19発現に及ぼす植物エストロゲンの効果をin vivoで検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
エストロゲンによる脱ユビキチン化酵素19(USP19)の発現調節機構を解明するために、USP19遺伝子のプロモーター領域を単離して、USP19の発現調節がエストロゲン受容体の制御下にあるかを検証する。次にUSP19による筋分化抑制機構を解明するため、USP19の基質の同定に挑む。また植物エストロゲンによるUSP19発現調節機構を解明するために、マウス骨格筋でのUSP19の発現を時空間的に解析するとともに、筋形成時のUSP19発現に及ぼす植物エストロゲンの効果をin vivoで検討する。
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