研究課題/領域番号 |
23580185
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
安藤 直子 東洋大学, 理工学部, 准教授 (70360485)
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研究分担者 |
峯岸 宏明 東洋大学, バイオ・ナノエレクトロニクス研究センター, 研究支援者(COEポスドク) (30440019)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | トリコテセン / マイコトキシン / 解毒微生物 |
研究概要 |
カビ毒(マイコトキシン)とはカビが二次代謝産物として生産するもので、人、家畜等に対し毒性を有する。中でも、Fusarium属などの糸状菌が作る"トリコテセン類"と呼ばれる化合物の一群は、真核生物のリボゾームに結合し、タンパク質合成阻害を起こす。このトリコテセンは、食を汚染した場合、物理的にも化学的にも解毒しにくいのが特徴である。そこで、本研究では、トリコテセンに対する解毒分解能を有する新規微生物の探索を行っている。 まず、トリコテセン解毒分解菌候補株は、赤カビ病菌汚染土壌、また、T-2 toxinを摂取させた土壌動物(ダンゴムシ)の排泄物から得た。それぞれ、LB培地、堀越培地、小麦デンプン培地、CMC培地、トリプトソーヤ培地に捲き、簡単なシングル化を行い、候補菌体として用いた。次に、トリコテセンの中でも比較的毒性の強いT-2 toxinを用い、このカビ毒を解毒・分解できる可能性のある微生物を探索するために、簡易なスクリーニング系の構築を目指した。第一スクリーニングとして出芽酵母を利用したDISC拡散法を用い、第二スクリーニングとしてHPLCによる単車物の同定を行った。1000コロニー近い菌体をスクリーニングした結果、約5%の微生物がT-2 toxinをより弱毒性のHT-2 toxinに変換することがわかった。現在まで、T-2 toxinが大幅に減少するケースは見られたが、HT-2 toxin以外の代謝物は同定できていない。選抜されたトリコテセン解毒分解候補菌については、16S rRNA遺伝子の塩基配列解析を行い、微生物の同定を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(平成23年度)の研究計画は、「トリコテセン高感度検出系の構築」と「トリコテセン解毒分解微生物のスクリーニング」である。まず、トリコテセン高感度検出系を構築するために、出芽酵母の遺伝子破壊ライブラリーを用い、トリコテセン耐性遺伝子を同定できたことによって、多くの知見を得られた。この結果は、トリコテセン高感度検出系の構築にも寄与し、その成果については、農芸化学会で口頭発表をおこなった。また、トリコテセン解毒分解微生物のスクリーニング系の構築にはやや手間取ったが、2段階、場合によっては3段階の簡易なスクリーニング検出系を構築できた。その結果、以前は1000コロニーを選抜するのに数ヶ月を要したものが、現在では数週間で行えるようになっている。さらに、代謝物の同定、および、候補微生物の同定など、一通りの操作を簡易に行えるようになった。以上の成果を得られたことから、だいたい1年目の研究目標までは達成できたのではないかと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で得られたトリコテセン解毒・分解能を持つ候補菌体の多くは、T-2 toxinの脱アセチル化を行う菌体であり、そういった意味では余り目新しいものではない。そこで、T-2 toxinを抜本的に解毒する能力を持った微生物の獲得を目指すため、現在もスクリーニングを続行中であり、その土壌のサンプリングやスクリーニングの際の負荷のかけ方などを検討している。 今後は、スクリーニングされてきた菌体の中に、T-2 toxinだけではなく、日本で問題になっているB型トリコテセンの分解を行える菌体があるか、確認を行っていく予定である。さらに、これらのトリコテセン解毒分解微生物の粗酵素を調整し、in vitroの系であってもトリコテセンを解毒できるのかを確認を行っていく。最終的には、トリコテセン解毒分解微生物に、該当酵素を大量に生産させ、その精製を行い、アミノ酸配列の決定とクローニングまで行うことが目標である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後も有望な微生物をスクリーニングしていくために、消耗品としてシャーレや培地を大量に購入する予定である。また、今後スクリーニングされてくる有望微生物の同定のために、PCRやシーケンスを行う予定であり、分子生物学研究用の試薬が必要になる。さらに、ターゲットとなる微生物を絞ることができれば、その粗酵素の抽出や、そこから酵素を単離していくためにカラムに研究費を使用する予定である。次年度は、現在のところ、特に備品の購入は行わない予定である。
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