研究課題
Fusarium graminearum等の糸状菌は、穀類に感染、または、腐生的に増殖する際、トリコテセン系カビ毒を生産する。本研究では、T-2 toxin、4-acetylnivalenol (4-ANIV)、deoxynivalenol (DON)の毒性を低減化/解毒化する微生物のスクリーニングを行った。23年度から25年度にかけて、1万クローンほどの土壌微生物をスクリーニングにかけた。25年度には、絞り込んできた土壌微生物について、さらなる精査を行った。T-2 toxinにおいては、2割程度の微生物がHT-2 toxin, T-2 triol, T-2 tetraolなどの脱アセチル化体に変換され、その毒性は著しく下がることが確認された。4-ANIVが微生物に代謝された場合、そのほとんどがnivalenol (NIV)に変換されていた。また、DONについては、いくつかの微生物がDONを代謝することができ、その毒性が低減化することが示されたが、現在、その代謝物の構造を同定しているところである。以上の結果から、土壌微生物にはトリコテセン系カビ毒の毒性を下げることができるものが相当数いることがわかった。そして、T-2 toxinと4-ANIVの場合、解毒微生物の多くがトリコテセンの脱アセチル化をおこなうことで、疎水性を減少させ、その結果、元々のトリコテセンの毒性が下げることが推測された。現在、NIV系トリコテセンをより簡易に検出するため、NIV系トリコテセンを酵素的に3,4,15-triacetylnivalenolに変換させ、それらをELISAで一括して検出する系の構築を試みている。そのため、15位のアセチル化を妨げる4位のアセチル基を外せる酵素を探索している。本研究で得られた微生物酵素は、この目的に使用が可能かもしれず、効率的検出に貢献する可能性がある。
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Mycotoxins
巻: 63 ページ: 161-170
10.2520/myco.63.161