研究課題/領域番号 |
23580186
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高橋 恭子 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (70366574)
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研究分担者 |
上野川 修一 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (50011945)
細野 朗 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (70328706)
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キーワード | 腸管上皮細胞 / マスト細胞 / 遺伝子発現 / 共生 |
研究概要 |
腸管には生体で最大の免疫系が存在するにもかかわらず、非自己に相当する莫大な数の腸内細菌が共生している。本研究では、腸内共生系成立の分子機構の1つとして、まず、腸内細菌からの刺激を常に最前線で受けとる腸管上皮細胞において、菌体認識とそのシグナル伝達に関わるTLR4およびTollip遺伝子の腸管上皮細胞に特徴的な発現制御機構を明らかにした。また、腸管上皮細胞におけるmRNA発現およびDNAメチル化パターンが腸内細菌によりどのような影響を受けるか網羅的解析により明らかにし、腸内細菌によるエピジェネティックな制御と遺伝子発現の関係を示した。さらに、炎症性腸疾患において発現異常が認められる分子につき、腸管の部位ごとの腸内細菌による影響を解析した。一方、アレルギー炎症を誘導するマスト細胞にそれぞれ特定の腸内細菌が作用することにより顆粒形成を抑制する、あるいはIgE受容体の発現を低下させることを示した。 このうち最終年度においては特に、腸内細菌の大部分が生息する大腸の上皮細胞でTollipタンパクが高発現し、この現象に腸管の部位により発現量が異なるmiRNAが関わることを示した。炎症性腸疾患において発現異常が報告されている各遺伝子の上皮細胞における発現の腸管の部位ごとの差異と腸内細菌の関与について明らかにした。また、Bacteorides acidifaciens A43がマスト細胞表面のIgE受容体の発現を抑制することを示した。 以上の結果により、腸内細菌が腸管上皮細胞やマスト細胞に作用することにより共生の成立・維持に関わる分子群の発現を変化させ自ら共生の成立に関わること、この制御の少なくとも一部はDNAメチル化やmiRNAといったエピジェネティックな機構を介することが示された。これらの成果は、炎症反応を制御して腸内共生系を良好な状態に維持する食品成分の評価系構築に応用可能なものである。
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