25年度に食品でNrf2アゴニストと考えられているワサビの成分である6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6- MSITC)の脂肪肝及び鉄蓄積の改善効果について以下の食餌を野生型(WT)及びNrf2欠損(KO)マウスに摂取させ検討した。1) 4%大豆油食12週間(コントロール食) 2) 4%大豆油+31%ラード食12週間(高脂肪食) 3) 2)の高脂肪食12週間に6- MSITC10mg/Kg/day週4回最終4週腹腔内投与 4) 2)の高脂肪食+1%カルボニル鉄12週間(鉄添加高脂肪食) 5) 4)の鉄添加高脂肪食12週間に6- MSITC10mg/Kg/day週4回最終4週腹腔内投与。1)2)3)の群間で比較すると2)で形成された脂肪肝はWTで6-MSITC投与にて改善され炎症マーカーも改善傾向が認められたがKOでは改善されなかった。遺伝子発現は肝内への脂肪酸取込遺伝子CD36及び脂肪酸合成酵素の転写因子SREBP-1cが2)のWTで発現増加を認め6-MSITC投与により抑制傾向にあったがKO群間では変化を認めなかったことより、これら遺伝子発現への6-MSITCの影響が脂肪肝改善に寄与した可能性が考えられた。4)5)の群間で6-MSITCの肝内鉄値への影響を検討したところWT及びKO両方で鉄抑制効果を認めず、鉄代謝関連遺伝子の発現も6-MSITCによる変化を認めなかった。23年度と24年度にはWTに比してKOの肝臓で脂肪酸酸化酵素と鉄代謝関連遺伝子の発現調節不全と中性脂肪及び鉄値の増加傾向が認められたことよりNrf2と脂肪肝炎発症との関連性が示唆された。25年度にはワサビ成分6-MSITCにより肝内鉄蓄積は抑制されなかったが脂肪肝炎はNrf2依存性に改善傾向が認められた。以上のことよりNrf2を標的とした食品成分による脂肪肝炎の予防の可能性が明らかとなった。
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