• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

[金属イオン-配位子]カクテルを用いた新規なキラル配位子交換法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23580192
研究機関富山県衛生研究所

研究代表者

小玉 修嗣  富山県衛生研究所, 化学部, 主幹研究員 (70360807)

研究分担者 山本 敦  中部大学, 応用生物学部, 教授 (60360806)
會澤 宣一  富山大学, 理工学研究部, 教授 (60231099)
多賀 淳  近畿大学, 薬学部, 講師 (20247951)
キーワード光学異性体 / 配位子交換 / キャピラリー電気泳動 / 有機酸 / 光学分割 / 金属イオン
研究概要

有機酸の中には光学異性体構造を有するものがあり、生体中の代謝物として重要な役割を果たしている。また、有機酸は食品の主要成分である他、添加物としても利用されている。これまで実試料分析可能な有機酸類の光学異性体一斉分析法は報告されていない。今年度は、多種類の有機酸類を一斉に光学異性体分析するできる方法を確立することを目的とした。その手段として多種類の金属イオンやキラル配位子を混合した〔金属イオン-配位子〕カクテルを泳動緩衝液としたキラル配位子交換キャピラリー電気泳動法について検討した。
前年度に得られた結果から、キラル配位子としてD-キナ酸を、2種類の金属イオンのうち1つは銅(II)イオンを用いることとし、もう一方の金属イオンについてリンゴ酸、酒石酸及びイソクエン酸の光学異性体分離を検討した。用いた金属イオンはAl(III)、Mn(II)、Fe(III)、Co(II)、Ni(II)、Zn(II)イオンの6種類である。その結果、Cu(II)イオンとAl(III)イオンの2種類の金属イオンを組み合わせた系でのみ、上記3種類の有機酸を一斉に光学異性体分析できることが分かった。本分析系に関しては、酒石酸ではCu(II)錯体が、リンゴ酸とイソクエン酸ではAl(III)錯体が光学異性体分離に関与していることが推定された。また、Al(III)イオンの変わりに同族のGa(III)イオンを用いた泳動緩衝液(Cu(II)-Ga(III)-D-キナ酸系)でも、3種類の有機酸を一斉に光学異性体分離できることも分かった。ただし、本分析法では泳動緩衝液のpHが5.0のときに有効であり、pHのずれは光学異性体分離のみならず、ピーク形状の悪化につながることも分かった。本分離のメカニズムについても検討を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1 金属イオンとキラル配位子の種々の組合せについて
前年度に得られた研究成果から、キラル配位子としてD-キナ酸を、2種類の金属イオンのうち1つは銅(II)イオンを用いることとし、もう一方の金属イオンについてリンゴ酸、酒石酸及びイソクエン酸の光学異性体分離を検討した。用いた金属イオンはAl(III)、Mn(II)、Fe(III)、Co(II)、Ni(II)、Zn(II)イオンの6種類である。その結果、Cu(II)イオンとAl(III)イオンの2種類の金属イオンを組み合わせた系でのみ、上記3種類の有機酸を一斉に光学異性体分析できることをみいだした。これまでのキラル配位子交換法では1種類の金属イオンと1種類のキラル配位子を用いた分析系が用いられてきた。しかし、本研究では複数の金属イオンを用いたキラル配位子交換法を複数の光学異性体に初めて適用したものであり、論文にも掲載された。このため、本研究課題は予定どおりの進捗状況である。
2 キラル配位子交換の分離メカニズムについて
上記のように、Cu(II)イオンとAl(III)イオンを組合わせて2種類の中心イオンとした分析系では、Cu(II)錯体が酒石酸の光学異性体分離に、Al(III)錯体がリンゴ酸とイソクエン酸の光学異性体分離に関与していることが推定された。D-キナ酸とCu(II)イオンを用いた系での酒石酸の光学異性体分離のメカニズムについてはすでに解明しており、D-キナ酸とAl(III)イオンを用いた系での分離のメカニズムを検討しており、予定どおりの進捗状況である。

今後の研究の推進方策

本研究課題の目的は、有機酸の光学異性体を一斉に分析できる方法を開発し、食品などの実試料分析に適用することである。この解決法としてキラル配位子交換に基づくキャピラリー電気泳動法を提案した。これまでは1種類の金属イオンと1種類のキラル配位子を混合した泳動緩衝液が用いられてきた。しかし、このような実験系ではアミノ酸は多成分を光学異性体分析できるが、有機酸では多成分の一斉分析法は報告されていない。そこで、多種類の金属イオンとキラル配位子を混合した泳動緩衝液(〔金属イオン-配位子〕カクテルと呼ぶ)を用いることにより、多種類の有機酸を光学異性体分析できるのではないかと考えた。これまでの研究成果を踏まえて、具体的には以下の点を検討する。
1 前年度に確立した2種類の金属イオンを用いたキラル配位子交換法について、リンゴ酸、酒石酸及びイソクエン酸以外の有機酸が分析可能か否かを検討する。
2 前年度に引き続き、食品、植物及び生体試料などを分析するため、分析を妨害するマトリックス成分を含む試料の簡便な前処理方法について検討する。
3 今年度の研究成果であるCu(II)-Al(III)イオンの2種類の中心イオンを用いたキラル配位子交換法の分離メカニズムを解明する。[Cu(II)イオン-D-キナ酸]系での分離メカニズムについてはすでに解明しているため、[Al(III)イオン-D-キナ酸]系での分離メカニズムを解明する。

次年度の研究費の使用計画

1 昨年度確立した分析系について実試料分析を行う。必要があれば分析条件の検討を行う。この実験はキャピラリー電気泳動装置を使用するため、必要な試薬及び器具(バイアル、電極やUVランプなど)を購入する。
2 実試料の前処理操作として各種前処理カートリッジを使用する。このカートリッジとしては市販の製品に加えて有機酸を特異的に結合させて精製しうる樹脂の開発も行っているため、その作成に必要な試薬及び器具を購入する。
3 前年度に開発したキラル配位子交換キャピラリー電気泳動法の分離メカニズムを解明する。この研究は円二色性や吸収スペクトル解析を用いるため、その検討に必要な試薬及び器具を購入する。
4 上記1~3の研究で得られた成果について、学会発表や論文投稿する際の費用に使用する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Enantioseparation of alpha-hydroxy acids by chiral ligand exchange CE with a dual central metal ion system2012

    • 著者名/発表者名
      Shuji Kodama
    • 雑誌名

      Electrophoresis

      巻: 33 ページ: 2920-2924

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Direct enantioseparation of lipoic acid in dietary supplements by capillary electrophoresis using trimethyl-beta-cyclodextrin as a chiral selector2012

    • 著者名/発表者名
      Shuji Kodama
    • 雑誌名

      Electrophoresis

      巻: 33 ページ: 2441-2445

    • 査読あり
  • [学会発表] 有機酸の光学異性体分析-2価及び3価の金属イオンを組み合わせた中心イオンによる配位子交換キャピラリー電気泳動法の開発2012

    • 著者名/発表者名
      小玉修嗣
    • 学会等名
      日本分析化学会第61年会
    • 発表場所
      金沢大学(金沢市)
    • 年月日
      20120919-20120921

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi