研究課題/領域番号 |
23580198
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
尾張 敏章 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (00292003)
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研究分担者 |
宮本 敏澄 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (00343012)
芝野 博文 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (00143412)
坂上 大翼 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (90313080)
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キーワード | 積雪制御 / 積雪除去 / 降雪遮断 / 融雪促進 / 暗色雪腐病菌 / 感染防除 / 天然更新 / 天然林再生 |
研究概要 |
1.積雪制御手法の適用が林床環境および種子の菌感染と活性に及ぼす影響を明らかにするため、コンテナボックスを用いた積雪環境制御下でのエゾマツ・トドマツ・ウダイカンバ種子への暗色雪腐病菌の野外人工接種を行った。その結果、除雪・融雪剤散布・雪囲い・嵩上げの4つの積雪制御処理がいずれも融雪の早期化に有効であること、厳冬期の土壌凍結が有意に菌の種子への感染を抑制すること、1週間程度のわずかな融雪の早期化が感染後の発病(種子の失活)を抑制する可能性のあること、を明らかにした。 2.比較的大きな面積の林冠ギャップに広がるササ地および、ササ地を「かきおこし」処理により鉱質土壌を露出させた地表において、暗色雪腐病菌のエゾマツ種子への感染を調査した。2011年秋の積雪開始期に、ササ地区、強度かきおこし区、弱度かきおこし区の地表にシードバッグにエゾマツ種子を封入して設置した。2012年の雪解け時の5月から6月に回収し、菌の分離を行なった。その結果、いずれの調査地でも暗色雪腐病菌はほとんど感染していないことが明らかになった。 3.積雪制御手法の適用が積雪状態と林床環境に及ぼす影響、および積雪制御に伴う林床環境の変化が種子の菌感染と活性に及ぼす影響を明らかにするため、天然林内での実証試験を開始した。演習林内の2か所(標高400m、700m)に3つの処理区(除雪、融雪剤散布、凹凸)と対照区を各3か所、計24か所(12か所×2調査地)の試験区を設置し、積雪深と土壌凍結深を定期的に測定した。また、各試験区の地表面にデータロガーを設置し、温度と土壌水分を計測した。トドマツとエゾマツの種子をそれぞれシードバックに入れ、各試験区の土壌表面に設置した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野外実験を通じて積雪制御手法の適用が林床環境および種子の菌感染と活性に及ぼす影響について知見が得られたとともに、当初の計画に従って林内実証試験を開始できたため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に従い、平成24年度から実施中の林内実証試験を継続するとともに、得られたデータの解析を行う。本試験および平成23~24年度に実施した野外実験の結果に基づき、積雪制御手法の適用が積雪動態に及ぼす影響、および積雪動態が林床環境と種子の菌感染・活性に及ぼす影響を明らかにする。研究結果を踏まえ、天然更新の促進に有効で実用化が可能と考えられる積雪制御手法を提示する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今冬も気温の低い日が続いたため雪解けが例年よりも遅れており、林内実証試験の期間が予定よりも長引いている。そのため、種子からの菌分離や活性試験、データ解析に加えて、積雪処理の実施やシードバッグの回収・運搬、試験区の原状回復(凹凸処理区の穴埋め戻し)等に研究費を使用する計画である。
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