研究課題/領域番号 |
23580199
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
石川 芳治 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70285245)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 水資源涵養 / 土壌侵食 / 水質 / シカ / リター |
研究概要 |
丹沢堂平地区ではシカの採食により林床植生が衰退しており、このため山腹斜面ではリターの流亡が激しく、林床上でのリター堆積量は減少している。一方で毎年秋には上層木であるブナ林により多量のリターが供給されている。堂平地区の斜面に幅2m×長さ5mの土壌侵食調査プロット10箇所を設置して4月~11月の間、1~2週間毎に土壌侵食量、リター流出量を測定した。また、各ブロットにおいて土壌侵食に大きな影響を与える林床植生被覆率、林床リター被覆率、林床合計被覆率を1~2週間毎に測定した。侵食された土壌は浮遊砂となって渓流を流下することが予想されるため、堂平地区を流域に含むワサビ沢(流域面積0.91km2)および堂平沢(流域面積1.41km2)と堂平地区の斜面(集水幅5m×長さ50m)の3箇所において、雨量計4台、水位計3台、濁度計3台を設置して降雨量(樹冠通過雨量)、渓流の流量、斜面の地表流の流量、渓流における濁度、斜面の地表流の濁度を4月~11月の間、10分間隔で測定した。その結果、斜面における土壌侵食量と渓流の浮遊土砂量には正の相関が認められた。また、斜面地表流と濁度、渓流の流量と濁度の時間変化を流量-濁度(浮遊土砂濃度)ヒステリシスで表した結果、斜面地表流と渓流では浮遊土砂流出の傾向が同様であることが分かった。このことから、流域の土壌侵食は渓流への浮遊土砂流出と密接な関係があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的はシカの食害により林床植生が衰退している丹沢山地のブナ林内の林床合計被覆率(林床植生被覆率+リター被覆率)の季節変化が山腹斜面における地表流流出、土壌侵食量および下流域の水流出および浮遊土砂量に与える影響を明らかにすることである。また、林床植生および堆積リターの水資源涵養機能、土砂流出軽減機能を明らかにし林床合計被覆率の変化から下流の渓流における水流出や浮遊土砂流出量の変化を予測する手法を提示することである。平成23年度における現地観測とそれ以前からの現地観測結果から、ブナ林内の林床合計被覆率(林床植生被覆率+リター被覆率)と土壌侵食量および地表流の流出率にはそれぞれ負の関係があることが明らかとなってきており、それらの関係式を求めることができた。一方、林床植生および堆積リターの水資源涵養機能、土砂流出軽減機能および林床合計被覆率の変化が下流の渓流における水流出や浮遊土砂流出量に与える影響については観測データが不十分であるために未だ十分には解明できていない。このことから、当初の研究の目的の概ね4割程度は達成できたと考えられる。今後平成24年度、25年度と観測データを充実させることにより、当初の目的を完遂させる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に引き続き、平成24年度および平成25年度は堂平地区の斜面と下流のワサビ沢・堂平沢において4~11月の間、樹冠通過雨量、土壌侵食量、リター流出量、地表流量、渓流の水位・流量、地表流と渓流水の濁度、渓流の浮遊土砂量についての現地観測を継続する。さらに平成24年度および平成25年度にはワサビ沢と堂平沢に自動採水器を設置して浮遊土砂を採取して、その粒径分布等を調査して、上流の斜面における地表流に含まれる侵食土砂の粒径分布と比較しこれらの関係を検討する。 平成23~25年度における観測データを基に、樹冠通過雨量と林床合計被覆率から林床斜面における土壌侵食量を算定する式を提示する。堂平地区斜面における地表流流出量・土壌侵食量・濁度と下流のワサビ沢・堂平沢における流量、濁度、浮遊土砂量の関係を分析し、プロットスケールから流域スケールに至る過程での水流出や浮遊土砂流出のメカニズムを明らかにする。林床合計被覆率の季節変化と渓流における流量と濁度の季節変化の関係を分析することにより林床合計被覆率の変化から渓流における流量、浮遊土砂流出量を算定する式を提示する。また、堂平流域におけるシカの食害による林床植生の衰退とそれに伴う林床合計被覆率の分布の変化が流域の流量、浮遊土砂流出量の季節変化および年変化に与える影響をシミュレーションする手法を提示する。以上の成果を、山地流域の水資源管理、土砂管理、森林管理、シカ保護管理に利用する方法について取りまとめ、国際会議や国内および海外の学会誌において広く成果の発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、平成23年度の洪水で故障した濁度計のセンサーの交換を行うとともに、設置している水位計や雨量計の維持管理のために研究費を使用する予定である。。さらに、平成23年度、24年度の観測により得られた浸食土砂・浮遊土砂の粒径分析、斜面における林床植生量およびリター堆積量の月ごとの変化の測定等を行うための研究補助員の雇用に研究費を用いる。また、樹冠通過雨量・林床合計被覆率と林床斜面における土壌侵食量・地表流出量の複合的な関係を分析するためと、堂平地区斜面における地表流流出量・土壌侵食量・濁度と下流のワサビ沢・堂平沢における流量、濁度、浮遊土砂量の関係を分析するため研究補助員の雇用に研究費を使用する予定である。また、研究成果を学会の研究発表会において発表するための旅費に研究費を使用する予定である。
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