研究概要 |
本年度は長野県において昨年度と同様のアンケート調査を実施した。具体的には、狩猟免許の更新講習の受講対象者約1,400人に対してアンケートを配布し、約880人から回答を得た。回答者のうち、免許取得後15年以内の回答者は約750人であり、「わな」免許のみ、あるいは「わな」免許+「網」免許の取得者は約450人であった。これに着目して分析をおこなった。新規免許取得者の年齢ピークは60~70歳代にあり、これは「わな」免許のみ取得者ではより顕著であった。免許の取得目的も獣害対策が主である。これは、有害駆除への出動日数や、活動場所にも現れている。「わな」のみ免許取得者は、約6割が単独行動であり、また形成するグループもその他の目的のものとは異なることも明らかとなった。さらに、捕獲した鳥獣は利用しないか、利用する場合でも自分では解体しない割合が高くなることも判明した。 今回の調査においては、今後5年以内に狩猟をやめると回答した人のもっとも多い理由は、高齢であることという結果となった。したがって、新規免許取得者が取得後あまり定着しない原因は、農地の獣害を防ぐために高齢者が「わな」免許のみを取得し、数年で耕作とともに狩猟もリタイアするためであるという、先行研究とは異なる結論が得られた。アンケート調査では、過去の免許取得状況も質問し、定年退職後の「わな」猟者は、過去に取得した第1種・第2種銃猟免許を廃止して「わな」免許だけを残したり、あるいは廃止後まったく免許をもたない状態で10~20年程度のブランクを経て改めて「わな」免許だけを取得するという行動様式をとっていることも明らかにした。以上の結果を、前年度の山梨県の調査結果と比較した。 これらの成果の一部を、林業経済学会2013年秋季大会と、第19回「野生生物と社会」学会大会とにおいて報告し、書籍『日本・アジアの森林と林業労働』の一部として公刊した。
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