研究課題/領域番号 |
23580205
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中西 麻美 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (60273497)
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研究分担者 |
稲垣 善之 独立行政法人森林総合研究所, 立地環境領域, 主任研究員 (00353590)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | スギ・ヒノキ林 / 下層植生 / 土壌肥沃度 / 養分循環 / 林地保全 / 間伐 / リターフォール / 残存木 |
研究概要 |
本研究では、間伐実施後に約10年が経過したスギ、ヒノキ林を対象として、リターフォールによる土壌への養分供給速度と土壌の有機物層における養分放出速度を評価し、間伐後の残存木の成長への影響と、下層植生の発達が林分の土壌肥沃度の保全に果たす役割を明らかにすることを目的とする。そこで、間伐後の残存木の一次生産、下層植生、A0層および表層土壌について調査を実施した。 同一斜面上の3箇所に調査林分を設定した京都のヒノキ林では、強度な伐採(小面積皆伐)から11年後に、すべての調査林分でA0層量、A0層の窒素量が大きく減少し、また、表層土壌の窒素濃度が増大し、C/N比が低下する傾向を示した。斜面位置により下層植生の種組成や個体数密度は異なったが、下層植生の成長に伴い、窒素濃度がヒノキよりも高い広葉樹種の落葉量が増大し、A0層の回転速度が増大するなど、窒素循環への影響が認められた。また、窒素安定同位体比を用いた解析により、A0層量および窒素資源量の違いが残存ヒノキの窒素利用に影響を及ぼしていることが明らかとなった。 高知のヒノキ林ではA0層の炭素・窒素量が少ない傾向が認められた。湿潤多雨な気象条件によって、A0層の分解速度が速やかであること、ヒノキ落葉が雨滴侵食で流亡しやすいことが影響していると考えられた。強度に間伐した林分では、A0層の炭素量・窒素量が少ない傾向が認められた。これらの結果より、A0層の窒素蓄積量は降水量や間伐の影響を受けやすいことが明らかになった。有機物層の窒素量が低下した林分でヒノキの葉の窒素濃度が低い傾向は認められなかった。しかし、有機物層の窒素蓄積の減少は長期的にはヒノキの窒素利用に悪影響を及ぼす可能性があると考えられた。 茨城のスギ林では、強度な間伐が雄花生産を促進し、幹成長を抑制することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年間を通じての定期調査(リターフォール採取)は、予定通り調査開始時から順調に実施できている。研究期間中に各調査地において1度ずつを計画している土壌調査および植生調査は、予定していた数の林分調査を実施できた。採取試料の分析およびデータ解析もおおむね順調に進められている。データがある程度揃ってきた調査地については、データ解析を進めて学会発表、論文発表も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
年間のスケジュール(特に野外調査の日程)の詳細について、不意の予定変更にも柔軟に対応ができるような内容を、研究代表者と研究分担者で早急に決定し、実施を確実にすることで進捗を早めていくように務める。1年間を通じて研究補助者を雇用することで、調査および試料処理の迅速化を図る。また、進捗状況に応じて、調査内容や実験手法などの見直しも含めて柔軟に対応していく。各調査地においてデータが揃ってきた時点で、解析手法を検討し、学会発表および論文発表も積極的におこなうことで、総括をしっかりできるように準備を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
交付決定時に交付額の減額の可能性があったために支出を抑制したこと、また、部局内経費の手当があり、今年度は実支出を予定よりも低く抑えることができたため、未使用額については次年度に1年間を通じて研究補助業務を担う人材を研究代表者の下で雇用する人件費に充当することとした。当初は、人件費・謝金は年間に数ヶ月間の使用を予定していたが、多くの試料の処理を迅速に進めていくためには、年間を通じての研究補助が必要と考えた。人件費以外は、当初の計画通りの使用を考えている。
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