研究課題/領域番号 |
23580205
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中西 麻美 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (60273497)
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研究分担者 |
稲垣 善之 独立行政法人森林総合研究所, その他部局等, 主任研究員 (00353590)
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キーワード | スギ・ヒノキ林 / 下層植生 / 土壌肥沃度 / 堆積有機物 / リターフォール / 間伐 / 養分循環 / 残存木 |
研究概要 |
本研究では、間伐実施から約10年が経過したスギ、ヒノキ林を対象として、リターフォールによる土壌への養分供給速度と土壌の有機物層における養分放出速度を評価し、間伐後の残存木の成長への影響と、下層植生の発達が林分の土壌肥沃度の保全に果たす役割を明らかにすることを目的とする。調査内容は、間伐後の残存木の一次生産、下層植生、A0層および表層土壌、リターフォールである。 京都のスギ林では、本数間伐率50%以上の間伐をしたプロットでは高木性樹種の実生が出現してきているが、無間伐の対照区および弱度間伐のプロットでは下層植生の変化は見られなかった。スギ林のリターフォールは年変動が非常に大きく、超強度間伐区で対照区を上回る年もあるが、概ね対照区が最も多く、間伐率が大きいほど少ない傾向が見られた。 同一斜面上の3箇所に調査林分を設定して小面積皆伐を実施した京都のヒノキ林では、斜面上部と中部で、下層植生の回復に伴ってリターフォール量が徐々に増大している傾向が見られた。リターフォールによって林地に還元される窒素量も同様に増大していた。下層植生の主体である広葉樹は、落葉の窒素濃度がヒノキ落葉よりも高いため、林地に還元される窒素量の増大速度は、リターフォール量と比べて大きかった。窒素資源量が特に乏しい斜面上部と中部のプロットでは、伐採から10年、11年が経過してようやく伐採区のリターフォール量および窒素還元量が対照区とほぼ同じか、これを上回るようになった。これらの結果から、伐採後の下層植生の回復に伴い窒素循環速度が増大しており、今後も下層植生の樹種が成長することが予想されるため、窒素循環速度はさらに増大すると考えられる。一方、伐採後に減少したまま、対照区の20~50%で推移していたヒノキ落葉は、伐採から11年目(斜面下部)、12年目(斜面上部と中部)になって増加傾向を示し、対照区の50~70%となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度も引き続き、各サイトで定期調査(リターフォールの採取、毎木調査)を行った。今年度は、京都のスギ林とヒノキ林で土壌調査を実施した。採取した試料の前処理を順調に進めており、前処理が終わったものから順次、分析にとりかかっているところで、予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
総括に向けて研究代表者と研究分担者の間で密な連絡と細かな連携をとって予定通り研究を進めていく。年間を通じて研究補助作業者を雇用することにより、野外調査および多くの試料の処理を速やかに進める。関連学会での発表や論文発表を行うなどして結果をまとめていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
調査に行くための旅費および研究成果を関連学会で発表するための旅費の支出を考えている。今年度は年間を通じて研究補助作業者を雇用することによって多くの試料の処理や現地調査を進めることができた。次年度も引き続きリターフォールの採取や分別処理、毎木調査などを行う予定であり、研究期間内にすべての試料の分析と調査を終えられるように、年間を通じて研究補助作業者を雇用する計画をしている。残りは、リターフォールや土壌などの試料を分析するために必要な消耗品の使用や、投稿論文の英文校閲の経費などに使用する計画を考えている。
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