研究課題/領域番号 |
23580206
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長谷川 尚史 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 准教授 (70263134)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | GPS / 森林 / SIP / LIDAR / 測位精度 / 林分情報 |
研究概要 |
本研究は,森林内におけるGPS信号の分断状況から,GPS測位精度および林分蓄積,立木密度などの林分情報を推定する技術を確立しようとするものである。本研究の根幹をなすGPS信号の分断指標(SIP)は,受信機とアンテナの組み合わせによって変化するため,様々なGPS受信機の組み合わせについて受信試験を行い,各GPS測位システムにおけるSIP値の特性について明らかにすることを初年度の目標とした。 当初,上賀茂試験地および芦生研究林において,新規購入の3機種を含めたGPS受信機で測位を行う予定であったが,次年度に行うLIDARデータの取得に関する予算に予定よりもやや費用がかかることが予想されたため,新規導入は2機種(Ashtech社ProMark100およびGPSMap62S)に絞り,また受信試験も測位点が設置済みで旅費がかからない上賀茂試験地のみで行うこととした。ただし,別予算で最新型測量用GPS受信機(Leica社GR10)を購入することが可能となったため,研究の遂行には悪影響はなかった。 SIPの解析には,前年に測量用受信機(Leica社SR530)を用いて2ヶ月に一度,6回,1時間ずつ観測を行った結果を用いた。測位点は,開放地,ヒノキ人工林,常緑広葉樹林,落葉広葉樹林の4点とし,SIPを算出するための時間とその季節変化等,SIP値の特性について詳細に解析した。その結果,算出する時間は10~15分とした場合に,SIP値と測位精度が最も相関が高くなること,全天写真から算出した開空度やDOP値と比べ,有意に相関が高かったことなどが明らかになった。これらの結果は現在,学会誌に投稿準備中である。 また,大阪府立大学の協力により,地上型LIDARデータの取得を行った。このデータは次年度行うヘリ搭載型LIDARデータからの詳細な樹冠推定に用いることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,6種のGPS受信システムについて,様々な環境下で測位試験を行い,SIP値の特性解析を行う予定であったが,LIDARデータ取得に関する費用調整のため,新規導入受信機の選定が遅れ,新規購入機種を3機種から2機種に減らし,正式な受信試験も次年度に延期した。しかし一方で,別予算で最新型測量用GPS受信機を購入できたため,予定通り6機種での試験が可能となった。同条件での測位を行う上でも,受信試験の延期は結果的に良いこととなった。また,当初,大阪府立大学の協力によって,想定していなかった地上型LIDARによる観測データの取得ができたことから,次年度のヘリ搭載型LIDARデータを用いて,より高精度の樹冠状況が推定できる可能性が高くなった。これらの状況を総合的に判断して,本研究はおおむね順調に進展している,と判断した。 なお,本年度の成果については当初,年度末に開催された日本森林学会において発表予定であったが,締め切りが早かったため,発表申し込みに間に合わなかった。ただし論文としては取りまとめ,現在,海外英文誌に投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度,全てのGPS受信システムを用いた受信試験ができなかったことから,従来の計画に加え,全てのGPS受信結果を用いたSIP値の特性に関する解析を行う。ただし,本年度の解析結果が想定よりも明瞭な結果(測量用受信機を用いた解析結果において,開空度等の他の指標よりもSIP値が測位精度と高い相関を有していたこと)であったことから,本年度の解析の方向性が明確であり,さほど大きな障害はないと考えられる。 本研究においては,樹冠情報の取得が最も重要な意味を有する。すなわち,LIDARデータの取得が最重要であり,精度および解像度が高く,また精度が均一なLIDARデータの取得を第一に考える必要がある。そのため,新規に取得するヘリ搭載型LIDARデータの取得に当たっては,航測会社の選定とその仕様について,綿密な協議を行い,さらに大阪府立大学にさらなる協力を仰ぐことによって,地上型LIDARデータとヘリ搭載型LIDARデータの解析を重点的に進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の通り,本研究の重要事項としては,より質の高いLIDARデータの取得が挙げられる。次年度,LIDARデータの取得に225万円を計上しているが,現時点で予定よりも多くの費用がかかることが予想されているため,本年度,新規購入予定であったGPS受信機1機種の購入を見送り,次年度に繰り越しを行った。次年度は円形魚眼レンズおよび画像解析用PCの購入等を予定しているが,これらを他大学から借りることができないか検討するなど,様々な可能性を追求し,経費の節約を図ることによって,点密度が高いLIDARデータの取得を優先して研究を進める。 さらに次年度は,別事業で芦生研究林内の人工林1.6haおよび天然林16haにおいて,それぞれ大面積プロット調査が予定されている。これらの研究プロジェクトとも連携を図り,研究の効率的な遂行をめざす。
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