研究課題/領域番号 |
23580209
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
津山 孝人 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10380552)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 光合成 / 樹木 / 裸子植物 / 被子植物 / 針葉樹 |
研究概要 |
適切に森林を管理するためには、対象とする林木の生理生態学的特徴を正確に把握し、長期的な視野の下、その特徴を現場の施行に合理的に反映させる必要がある。従って、樹木種毎の性質を正しく把握することが森林管理の第一歩となる。多くの針葉樹は、北半球高緯度地方の山岳部に生育し、冬季の低温下でも緑を維持することができる。これは光合成の高い低温光阻害耐性能による。針葉樹特異的な低温光阻害耐性能について調べるために、クロロフィル蛍光(光化学系IIの活性)および820 nmにおける吸光度(光化学系I反応中心P700の酸化還元状態)を測定した。その結果、針葉樹の葉では、過剰光を照射しても、チラコイド膜における電子伝達鎖の還元レベルは低く保たれることが分かった。この性質は、グネツム類、ソテツ類、イチョウを含め裸子植物の全ての分類群からの植物で共通していた。一方、過剰光下での電子伝達鎖の還元レベルは被子植物の種間で大きな差があったが、裸子植物のそれと比較して一様に高かった。電子伝達鎖の還元レベルの制御は酸素に依存することも明らかとなった。2%以上の酸素濃度が裸子植物(針葉樹)特異的な光合成制御に必要であった。裸子植物の電子伝達の制御についてメーラー反応の関与を調べる目的で電子スピン共鳴によるモノデヒドロアスコルビン酸ラジカル(MDA)の検出を試みた。しかし、裸子植物(針葉樹)生葉に過剰光を照射下してもMDAの蓄積量は検出限界以下であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
被子植物と裸子植物の光合成制御の違いを明らかにできたことで目的は十分に達成されていると思われる。解析をさらに深めるための試みに多くの時間を割き、今後の研究の方針を定めた点では当初の期待を上回る進捗状況と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
裸子植物特異的な光合成制御の要因を明らかにする。光合成による酸素消費の測定が必要になるが、これを国内で実施するのは難しい。現在、海外の研究グループとの共同研究を模索中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
裸子植物(針葉樹)特異的な酸素依存代替電子伝達の要因を明らかにする。針葉樹から無傷葉緑体の単離を試みつつ、電子スピン共鳴解析や酸素の質量分析などを行い、酸素依存電子伝達の分子的実態に迫る。候補となる要因については、シロイヌナズナの該当欠損株を用いた相補実験を行う。研究費の大半は消耗品費と塩基配列解読費に当てる。
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