研究課題/領域番号 |
23580209
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
津山 孝人 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10380552)
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キーワード | 針葉樹 / 裸子植物 / 光合成 / 環境ストレス耐性 / 活性酸素 |
研究概要 |
スギ、ヒノキ、マツ等の針葉樹においては、光合成電子伝達の安全弁機能が被子植物よりも発達していることが示唆された。ここで安全弁とは、強すぎる光から光合成電子伝達系を保護する役割を果たし、電子伝達鎖に過剰な電子が供給された場合に、電子伝達鎖から電子を逃し、電子伝達鎖の過剰還元を防止する仕組みを指す。電子伝達鎖が過剰に還元されると、酸素が還元され活性酸素が発生する。活性酸素は有毒であり、光合成を阻害する。光は通常許容できる強さであっても、乾燥や低温などの環境ストレスにより光合成炭酸固定が抑制されると、光合成にとって過剰となる。したがって、安全弁なしには植物は環境ストレスに耐えることはできない。 針葉樹における光合成の安全弁について調べるために、質量分析計による光合成電子伝達の解析(酸素安定同位体の吸収速度の測定)を行った。その結果、針葉樹(セコイヤ、マツ、ドイツトウヒなど)では酸素還元の能力が高いことが分かった。この酸素還元の候補としてはメーラー反応が考えられる。すなわち、針葉樹は光が強すぎる場合、過剰な電子を酸素へ流し、生成する活性酸素をメーラー・APX経路(水-水サイクル)で安全に処理することが可能であると考えられる。 メーラー反応の解析は事実上、葉緑体やチラコイド膜におけるin vitroの系によるしかなかった。本研究では、生葉を用いたクロロフィル蛍光測定によるメーラー反応の測定(飽和パルス光照射後のクロロフィル蛍光強度の減衰)を試みた。結果は質量分析計による定量測定によって確かめた。クロロフィル蛍光減衰によるメーラー反応の簡易迅測定法は、植物の活性酸素消去能の解析に応用できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
被子植物と裸子植物の光合成制御の違いについて、永く懸案となっていた質量分析法による解析を行うことができた。これにより、裸子植物は酸素が関与する反応に違いがあることが明らかとなった。今後は、その反応の詳細を明らかにする必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
裸子植物(針葉樹)特異的な酸素依存(代替電子伝達)反応の詳細を明らかにする。酸素依存反応の迅速解析法の応用を模索する目的で、イネを手始めに酸素依存反応の品種間差を調べる。得られた結果を基に、スギやヒノキの品種間差の解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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