研究課題/領域番号 |
23580212
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
井上 みずき 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (80432342)
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研究分担者 |
藤 晋一 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (40315601)
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キーワード | 遺伝的多様性 / ウイルス / ムカゴ / ヤマノイモ |
研究概要 |
温帯植物の約7割は有性繁殖と無性繁殖の両方の繁殖戦略を保持している。有性繁殖は無性繁殖に比べて2倍のコストがかかる。しかし、病原体や寄生者に対抗進化できるために無性繁殖と比べて有性繁殖は有利であるという説、病原体=赤の女王仮説が存在する。この説では稀な対立遺伝子を持つ植物個体ほど有利になるため、有性繁殖によって遺伝的変異が生み出される状況がウイルスに抵抗性のある状態となる。この説の信憑性は高いが野外集団における検証例は少ない。そこで、種子繁殖とは別に、ムカゴでクローン繁殖するヤマノイモ4個体群(秋田、つくば、京都、岡山)の遺伝的多様性とウイルス感染率の関係を明らかにする。ウイルスについてはJYMVとCYNMVを対象とした。200平方メートルに存在する全てのヤマノイモ個体の葉をサンプリングし、状態(種子実生、実生、ツル)、性(オス、メス、非開花)、ウイルス病徴の有無を野外にて記録した。ヤマノイモの遺伝的多様性はマイクロサテライト8遺伝子座の多様性に基づいて算出し、ウイルスの感染率はRT-PCRやLAMP法による判定に基づいて算出した。感染率には個体群間で大きな変異があり、高いところでは、8割を超えていた。現在のところ、病原体=赤の女王仮説を支持する結果は得られていない。今後、解析個体群を増やすとともに、アブラムシの水平感染率についても考慮する必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
課題の主たる実行者が半年間、育児休業中であったため十分な野外調査が困難であった。また、実験についても育児休業中であったこと、職場復帰後しばらくは常に子から絶え間なく風邪をもらい、十分に行なうことが出来なかった。 しかし、H25年度は遅れを取り戻すべく、調査と実験をすすめ、研究が進展した。 ただし、ウイルス判定の試薬にコンタミが生じ、原因究明のため、若干、実験の遅延がまだ生じている。また、想像以上に地元サイトでウイルス罹病率が高く、操作実験がしにくい状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今年は学生を一人、科研研究のために確保しており、また子育て環境も整いつつあり、研究の進展が期待できる。さらに実験や調査に時間の確保をしていきたい。また、論文作成も行うために、関連分野の論文も読み進めているところである。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年10月から平成24年9月まで1年間、産休および育児休暇を取得したことによる野外調査・実験の遅れ、また、それより前の5か月間程度は妊娠期間で野外調査が十分にできなかったことから、当該研究は1年単位で遅れが生じており、計画を変更し、25年度の研究は26年度に行うため、未使用額が発生している。 25年度に行うはずであった調査を一部変更し、ヤマノイモ野外個体群の遺伝的多様性調査とアブラムシ捕獲調査、これらのウイルス保有調査を26年度に行い、その調査出張費、および実験消耗品費および機器利用費に充てることにしたい。
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