研究課題/領域番号 |
23580214
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研究機関 | 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 |
研究代表者 |
大野 泰之 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, その他部局等, 研究員 (30414246)
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研究分担者 |
渡邊 陽子 北海道大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (30532452)
松木 佐和子 岩手大学, 農学部, 講師 (40443981)
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キーワード | ウダイカンバ / 衰退 / 二次展葉 |
研究概要 |
激しい食害を受けたウダイカンバが衰退に至るパターンとプロセスを理解するため、胸高直径(DBH)が20~46cmのウダイカンバ46個体(樹齢約100年)を対象に、個体ごとの食害状況と枯死状況を2006~2012年にかけて観察した。激しい食害は2006~2008年、2011年のそれぞれ7月に観察された。食害後の観察木の応答は食害の程度によって異なり、激しい食害を受けた個体では食害から3~4週間後に二次展葉していた。観察木の死亡は2009年から確認され、 2012年6月までの累積枯死率は26%に達した。ウダイカンバの死亡率(確率)に及ぼす二次展葉の有無(食害程度の指標)と個体のDBHの影響を解析した結果、DBHが小さい個体が高頻度に二次展葉した場合に死亡率が高くなることが明らかとなった。 ウダイカンバが衰退に至る長期的なパターンを明らかにするため、観察期間中に死亡した個体を対象に年輪解析を行った。ウダイカンバの年輪幅は食害を受けた年付近に低下していた一方、年輪幅の減少傾向は食害以前からすでに認められており、食害以前の肥大成長量の違いが食害後の死亡率に影響している可能性が示唆された。 ウダイカンバが衰退に至るプロセスを個葉レベルから明らかにするため、二次展葉により形成された葉(二次葉)と食べ残された葉(一次葉)の諸性質と光合成能力を8月中旬~10月上旬にかけて調査した。季節を通して、二次葉は一次葉に比べて葉面積およびLMA(単位葉面積あたりの乾物重量)が小さかった。また、光合成能力の指標であるVcmax(最大カルボキシル化速度)、Jmax(光飽和時の最大電子伝達速度)も,一次葉に比べて二次葉で低くかった。これらの結果は、二次葉の炭素獲得能力が一次葉に比べて低いことを示している。つまり,激しい食害とその後の二次展葉は,炭素獲得量の低下を通して個体の死亡に影響している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では、植食者に対するウダイカンバの応答を個体レベル、個葉レベルで調査し、食害に対する短期的な応答を明らかにするとともに、年輪解析によりウダイカンバが衰退(死亡)に至る長期的なパターンを明らかにすることを目的としている。今年度は、激しい食害を受けたウダイカンバの個体レベルの死亡や衰退には、食害の程度だけでなく、食害を受ける以前の成長の良否が影響している可能性を見いだすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後もウダイカンバの衰退状況と食害状況、個葉の生理特性について、継続的に観察、調査を行っていく予定である。今後は、年輪解析を重点的に行い、食害を受ける以前の肥大成長量と衰退・枯死との関連性を定量的に評価し、ウダイカンバが衰退・枯死に至る長期的なパターンを明らかにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は継続的に行っている食害状況、枯死状況、個葉の生理特性の測定のための旅費、分析費として研究費を用いる他、年輪解析用のサンプルを採取を行うための旅費とそれにかかる物品費、解析用の測定機器の物品購入に研究費を使用する。その他、共同研究者との打合せにかかる旅費、および学会等への参加のために研究費を使用する。
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