研究課題/領域番号 |
23580215
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研究機関 | 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 |
研究代表者 |
真坂 一彦 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部林業試験場森林環境部, 主査(防災林) (60414273)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | クロマツ / 海岸林 / 水ストレス / 針葉 |
研究概要 |
本研究では,海岸生のクロマツの水ストレス応答様式を針葉の形態的・生理的特性によって評価するため,強制的に水ストレス(乾燥処理,浸水処理)を与えたクロマツ苗,および過湿立地のために衰退している海岸の造林地(激害区)に生育するクロマツを対象に,針葉長,窒素含有量,クロロフィル含有量,炭素安定同位体比(δ13C),水ポテンシャル(Ψp),蒸散速度を測定した(乾燥・浸水処理のコントロールは苗畑植栽,激害区のコントロールは衰退が軽微な微害区)。 以下に主要な調査結果を抜粋すると,浸水処理および乾燥処理したクロマツのクロロフィル含有量±標準偏差(それぞれ0.875±0.226μg/mgと1.705±0.378μg/mg)は,コントロール(2.522±0.308μg/mg)に比べ有意に短い傾向が認められた。激害区と微害区のあいだで有意な差は認められなかった(2.357±0.362μg/mgと2.487±0.478μg/mg)。一方,δ13Cは浸水処理とコントロールでは有意な差は認められなかったが(-30.69±1.18‰と-31.13±0.49‰),両者は乾燥処理(-25.61±1.03‰)との間で有意な差が認められた(分散分析)。激害区のδ13Cは微害区より有意に小さい傾向が認められた(-31.10±0.82‰と-30.28±0.86‰)。Ψpはコントロールの値(-0.95±0.30MPa)が浸水処理(-0.64±0.27MPa)より有意に小さかったが,乾燥処理(-0.84±0.36MPa)とは有意な差が認められなかった(分散分析)。蒸散速度については,研究協力者であるS. Delzon准教授(ボルドー第1大学)と検討した結果,ポロメータ等を用いたチャンバー法よりも,クチクラ蒸散も評価できる重量法の方が適当となったため,次年度以降は重量法によって評価を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付金の配当の事情から,蒸散速度や水ポテンシャルの季節変化の評価ついては,秋季のみの調査になってしまったが,水ストレスの応答様式を多角的に評価するという本研究の主旨からすれば,大きな問題ではない。水ストレス評価法の第一人者である研究協力者と検討しながら,蒸散速度の評価手法にも進展があったため,全体として「おおむね順調に進展している」と考える。
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今後の研究の推進方策 |
データを継続的に集積し,次年度以降には学会等での発表も行う予定である。調査項目は,初年度と同様に海岸生のクロマツの水ストレス応答様式を針葉の形態的・生理的特性によって評価するため,強制的に水ストレス(乾燥処理,浸水処理)を与えたクロマツ苗,および過湿立地のために衰退している海岸の造林地(激害区)に生育するクロマツを対象に,針葉長,窒素含有量,クロロフィル含有量,炭素安定同位体比(δ13C),水ポテンシャル(Ψp),蒸散速度を測定する。蒸散速度については,重量法により,クチクラ蒸散と気孔蒸散の分離を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
土壌水分計の購入以外は初年度と同様である。旅費は,現地(クロマツ衰退地)での調査および,クロマツ針葉のδ13Cとクロロフィル含有量の分析のために大学等への出張,学会参加に供する。また,蒸散速度等を主体とした水ストレス評価方法の検討のため,ボルドー第一大学(フランス)の研究室を訪問する。物品費は野外調査や室内での分析に必要な消耗品類の購入に充てる。
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