模擬木(ポリ塩化ビニール製)を屋外のトレイ上に設置して林分を作り、自然降雨の下で樹冠遮断蒸発Iを測定した。模擬木は樹高65cm(小)及び150cm(大)の2種類を用いた。模擬木小はトレイ1と2(177.6cm角)に、模擬木大はトレイ3(360cm角)に設置し、トレイ2と3では棒を継ぎ足して樹高を変化させた。実験はA、B、Cの3回行った。[実験A]トレイ1(樹高、植栽本数):65cm、41本、トレイ2:90cm、41本、トレイ3:150cm、41本、[実験B]トレイ1:65cm、41本、トレイ2:110cm、41本、トレイ3:240cm、41本、[実験C]トレイ1:65cm、41本、トレイ2:110cm、25本、トレイ3:240cm、25本。いずれの実験においても、林内外の雨量の差から一降雨毎のIを算出した。さらに、実験B とC では、トレイ1と3でそれぞれ1本の代表木の重量を連続測定し、降雨中のIを時間分解能5分で算出した。 雨量に対する樹冠遮断の割合は実際の森林と同程度となった(12.1%~22.0%)。Iは樹高と伴に増大する傾向が見られた。トレイ2では間伐によりIが17.6%から22.0%へと増加し、トレイ3では逆20.7%から14.1%へと減少した。間伐によってIが増加したとする研究例は見当たらず、新たな知見である。原因としては、間伐で通気性が向上したことが考えられる。降雨中のIを算出したところ、降雨中には雨量に比例した蒸発が起きているのに、降雨休止中はほとんど蒸発が起きていないことが新たに分かった。これは濡れた樹冠からの蒸発ではなく、雨滴飛沫が蒸発することでIが生じているとする飛沫蒸発説を間接的に裏付ける結果である。 模擬木実験はその扱いやすさから、今後、樹冠遮断研究の有効な手段となり得る。
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