研究課題/領域番号 |
23580217
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
西口 満 独立行政法人森林総合研究所, 生物工学研究領域, 主任研究員 (80353796)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ポプラ / LEA / 環境ストレス / 遺伝子組換え / 耐塩性 |
研究概要 |
本研究では、水欠乏により大量に作られるポプラのLEAタンパク質(late embryogenesis abundant protein、後期胚発生蓄積タンパク質)について、その生理学的な役割と生化学的な性質を明らかにすること、および、突然変異により性質を変えた機能改変型LEAタンパク質を作り出すことを目的としている。 我々は、ポプラへの潅水を止め、水欠乏状態にすると、根や葉において遺伝子の発現量が数百倍上昇するLEAタンパク質の遺伝子(cDNA)を発見した。このLEAタンパク質は180アミノ酸残基(分子量は18.3kDa)からなると予想され、内部にLEAグループ1に特徴的な配列を持っていることから、PnLEA1と名付けた。PnLEA1に類似しているポプラ属以外の生物種のタンパク質としては、ダイズ属の種子に含まれるLEA4(相同性は60%)や、シロイヌナズナのLEA4-5(相同性は51%)があった。 PnLEA1の生理学的な役割を解明するため、PnLEA1を過剰発現、および発現抑制するバイナリープラスミドを構築し、遺伝子組換えポプラの作製を始めた。また、LEAタンパク質の生化学的な機能解析を目的として、組換えLEAタンパク質を得るため、大腸菌にLEAタンパク質のcDNAを導入し、発現させた。通常の大腸菌は、培地中の塩化ナトリウム濃度が高くなると増殖能が低下する。しかし、LEAタンパク質を発現させた大腸菌では、低下した増殖能が部分的に回復したことから、ポプラのLEAタンパク質は細胞の耐塩性に関わっていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的に従った本年度の達成目標は、LEAタンパク質の遺伝子をポプラに導入し、LEAタンパク質の量を変えた遺伝子組換えポプラを作ることと、LEAタンパク質を大腸菌で合成することだった。 実際に、LEAタンパク質の遺伝子を過剰発現、および発現抑制するバイナリープラスミドを構築し、遺伝子組換えポプラの作製を始めた。また、組換えLEAタンパク質を得るため、大腸菌にLEAタンパク質のcDNAを導入し、発現させることに成功したため、達成度については、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、LEAタンパク質の遺伝子を導入した遺伝子組換えポプラの作出を行い、作出した遺伝子組換えポプラについて、導入したLEAタンパク質の遺伝子をPCR法で検出する。また、LEAタンパク質の遺伝子の発現量を定量的PCR法で数値化する。 LEAタンパク質の生化学的解析として、LEAタンパク質と、他の酵素タンパク質(アルコール脱水素酵素や多糖分解酵素などが候補。)を混ぜた後、加温や化学物質処理を行う。その後、酵素活性や沈殿形成を測定・比較し、LEAタンパク質による他の酵素の安定化作用などを明らかにする。 ポプラのLEAタンパク質の遺伝子(cDNA)から、PCR法により、様々な突然変異をもつ変異型LEAタンパク質遺伝子群を作る。この変異型遺伝子群を大腸菌に導入して、高い塩濃度や高温で生育してくるものを選抜する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度への繰り越しが生じた理由は、遺伝子組換えポプラの作出に伴って実験量が増えてきており、次年度に実験補助員(非常勤職員)雇用日数を増やすと謝金(賃金)が増額となる見込みがあったため、本年度は節約に努めた。
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