研究課題/領域番号 |
23580219
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
濱口 京子 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, 主任研究員 (60343795)
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研究分担者 |
後藤 秀章 独立行政法人森林総合研究所, 九州支所, 主任研究員 (10353682)
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キーワード | ナラ枯れ / 地域変異 / カシノナガキクイムシ / 系統識別 |
研究概要 |
国内のカシノナガキクイムシは遺伝的に大きく二つの系統にわかれ、それぞれの系統はさらに細かく複数のタイプにわかれる(Hamaguchi and Goto 2010)。しかし遺伝的系統を判別するには専門の分類学者が形態で識別するか塩基配列を読んで判別するしか、これまでのところ手立てがなかった。そこで本研究では分子生物学的手法を利用した、より簡便な判別法を開発する。 平成25年度は、DNA解析によるカシノナガキクイムシの系統判別法の開発および野外でのカシノナガキクイムシの簡便な採取・保存法の検討を目的として研究を進めた。DNA解析による系統判別法については、rDNA-28S領域を用いたRFLP(制限酵素断片長多型)による判別法を検討し、3つの制限酵素を用いることによりこれを可能にした。また一部の系統については系統特異的プライマーを作成し、mtDNAを用いた判別法も開発した。紀伊半島や九州南部では異なる系統が隣接して分布するが、ここで開発したrDNAとmtDNAによる判別法を併用すれば、これらの地域における系統間交雑の有無についても検討可能と考えられた。野外でのカシノナガキクイムシの採取・保存法の検討については、衝突板トラップ等複数のトラップや、エタノール、プロピレングリコール等複数の保存液による採取・保存実験を行い、データを取得した。データ解析中であるが、トラップの耐雨水の試験では、市販のカシナガトラップ(ファンネルタイプ)と改良型の衝突板トラップで雨水の浸入が防げることなどが明らかになっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度の目的の一つであるDNA解析による簡便な系統判別法の開発については計画通り判別法を開発することができた。一方、もう一つの目的である野外での簡便な採取・保存法の検討については、計画に沿ってデータの取得までは完了したものの、産前・産後休暇等による研究の中断により、データ整理を完了するには至らなかった。未完了部分については補助事業期間延長により対処予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究中断による補助事業期間延長により、平成29年4月1日に研究再開予定である。 再開後は25年度に未完了であった野外実験データの整理・解析を完了し、カシノナガキクイムシの簡便かつ有効な採取・保存法を選出する。さらに、平成26年度に行う予定であった、本研究で確立した系統識別法の有効性・簡便性の検証を当初の計画に沿って行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
産前・産後休暇による研究中断にともなう予算執行計画の若干の変更により、わずかな残額が生じた。 研究再開後、データ整理および解析のための物品費として使用する。
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