研究課題
林業事業体が雇用している作業員にチェーンソー用防護服を支給した場合に見込まれる災害コスト削減額と防護服支給経費の関係から、防護服導入による事業体経営上の効果を検証した。チェーンソーによる切創災害の実例調査から、被災の発生頻度、被災後の休業日数の分布(平均は16.7日)、防護服の使用開始から廃棄までの平均使用期間(20.7ヶ月)等を明らかにした。なお、調査から防護服の適切な使用方法の周知と実践により使用期間の延長は可能と判断し、防護服の更新周期は2年程度が妥当と判断された。調査ならびに統計資料、既刊の報告書等から情報を得て、災害発生後に想定される様々な経費、損失、補償等について概算を行い、事業体が防護服を2年に一度支給し、防護服による災害回避率を60%として災害発生によって生じるコストを試算した。その結果、事業損失、再発防止対策経費、事業体の社会的信用喪失による損失等を除外しても、2年間に見込まれる防護服使用による災害コスト削減額は防護服購入経費と同額程度であることがわかった。さらに、事業損失をモデルケースで試算すると、被災者が2、3日休む程度のケガでも現場の生産損失は7万円を超え、作業システムや作業班構成人数によっては、被災者が長期休業をすると100万円を超える生産損失を出す場合があることがわかった。こうした現場の生産損失も加えて考慮すれば、事業体が作業員に防護服を支給して着用させ災害数を減少させることにより、防護服支給経費以上の災害コストが削減できる可能性が高く、事業体経営の安定化を図ることが可能と考えられた。災害発生後の再発防止対策経費、新規事業獲得制限による収入の減少、事業体の社会的信用等も考慮すれば、多くの林業事業体にとって事業体が組織として防護服を導入することは経営上非常に有利であると考えられた。
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森林利用学会誌
巻: 25巻2号 ページ: 119-126
関東森林研究
巻: 65巻1号 ページ: 139-140