研究課題/領域番号 |
23580223
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐野 雄三 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (90226043)
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研究分担者 |
幸田 圭一 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (80322840)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 広葉樹 / 壁孔 / 道管 / 抽出成分 / 通水 / 走査電子顕微鏡 |
研究概要 |
広葉樹の中には、通水機能を有する辺材部において道管相互間の壁孔壁が電子顕微鏡で抽出できるほどに厚く抽出成分に覆われている樹種がある。本課題の目的は、(1)この抽出成分の組成を解明すること、(2)どのような植物群に存在するのかを明らかにすること、(3)この抽出成分が通水制御にどのように関与しているかを解明すること、である。H23年度は、このうち(1)と(2)に関する研究を進め、以下の知見を得た。(1)組成の解明:材料として抽出成分の存在が確認されているシラカンバを選び、溶媒の極性により抽出挙動に違いがあるかを調べた。その結果、この抽出成分は、極性の低いヘキサンでも極性の高いエタノールと同様に抽出されることが明らかになった。(2)抽出成分が存在する植物群:北大研究林札幌実験苗畑や同苫小牧研究林にて採取した9科10種の試料を使用した。生材状態でトリミングの後、各樹種につき凍結乾燥およびエタノールによる溶媒置換乾燥の2通りの乾燥法により試料を乾燥させ、走査電子顕微鏡観察をおこなった。道管相互間の壁孔壁を覆う抽出成分の存在は、オニグルミ、シナノキ、ヤマナラシで確認された。また、この抽出成分は放射柔細胞や軸方向柔細胞中にも存在するのが観察された。これに対して、キハダ、ノリウツギ、ハリギリ、ハリエンジュ、ハルニレ、ブナ、ミズナラでは、凍結乾燥した試料と溶媒置換した試料との間で、道管相互間の壁孔壁や放射柔細胞の内容物の微細形状に電子顕微鏡的にはっきりした違いが観察されず、抽出成分は存在しないか、存在するとしてもきわめて微量であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度の研究により、研究対象の抽出成分が極めて限られた樹種だけではなく、身近で入手できる複数種にも存在することが明らかになり、今後の解析にあたって樹種選定の幅が拡がるなど、研究を効率的に進めるための有益な知見が得られた。1年目の成果として、満足できる内容である。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度以降、まず成分組成の同定に関しては、H23年度の成果に基づき、ヘキサン画分から単離、精製、同定を進める予定である。通水制御機構の検討については、H23年度の成果に基づき、オニグルミのような道管の径が小さく密度が疎な樹種をモデルとして解析に着手する。また、どんな分類群で見られる現象なのか、さらに調べてみたい系統群がまだまだあるので、時間が許す限り対象を広げて試料採取~観察を進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の未使用額(納品は年度内で支払いが次年度にずれ込んだ分)に関しては、同年度に実施した試料の調製、および成分の抽出、単離、精製実験のために使用する。H24年度配分予算に関しては、顕微鏡観察関係および化学分析関係の試薬・消耗品類に加え、今年度から着手する透水性解析用の器具類に使う予定である。また、多様な植物群からの試料採取のために旅費を使う予定である。
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