研究課題/領域番号 |
23580226
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
和田 昌久 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (40270897)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | セルロース / ヒドロゲル / 孔径制御 / 圧縮試験 / 細胞足場材料 |
研究概要 |
まず、アルカリ・尿素混合水溶液により調製したセルロース溶液に対して、飽和濃度以上に尿素を添加し、希硫酸で再生後、水洗を行い、従来よりも大きな空隙を有するセルロースヒドロゲルの調製を行った。力学試験の結果から、このゲルは半分の厚さに圧縮されてもその形状を維持し、3~5 kPaの強度を示した。また、走査型電子顕微鏡観察の結果から、このゲルは100~300 μmの空隙を有していることがわかった。しかし、研究を行う過程で、I) セルロース溶剤であるアルカリ・尿素混合水溶液の性質上、再生浴(希硫酸)の使用は不可避であり、その結果、厚み方向に対して均一な構造を有するゲルを調製することが困難である、II) 尿素の高い吸湿性から、実験室内で粒子サイズを均一に揃えた尿素粒子を調製することが困難である、といった問題点が明らかとなった。そこで、申請者らが発見した新規セルロース溶剤である臭化リチウム飽和水溶液を用いて、本研究の遂行を目指した。120℃でセルロースを溶解させた臭化リチウム飽和水溶液は、室温で放冷することで、アルカリ・尿素混合水溶液由来のものと同様な、ナノ多孔構造を有するセルロースヒドロゲルを与えた。そこで、臭化リチウム飽和水溶液を用いて調製したセルロース溶液に、塩化ナトリウムを飽和濃度以上加え、冷却による再生後、水洗することで、従来よりも大きな空隙を有するセルロースヒドロゲルを調製した。力学試験の結果から、前述のアルカリ・尿素混合水溶液由来のヒドロゲルと同様の圧縮強度を有し、また、走査型電子顕微鏡観察の結果から、100 μm以上の空隙を有していることが明らかになった。この発見は、i) 再生浴が不要であること、ii) 塩化ナトリウムの分級は容易であること、などの観点から重要な意義を持ち、本研究に大きな進展をもたらした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初掲げた平成23年度の研究計画のうち、セルロースゲルの孔径制御と物性評価を行うことができた。また、従来提案していたものよりも、より適切なセルロースゲル調製方法の発見に至った。研究計画に含まれているキトサン導入や物質拡散能の評価を行うことができなかったが、これまでに申請者によって同様の手法は複数回行われており、そのプロセスは確立されている。より簡便な調製方法の発見と合わせて考えると、平成24年度中の研究遂行速度の大幅な向上が期待でき、当該研究は概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
孔径制御されたセルロースヒドロゲルに対して、過ヨウ素酸酸化によりキトサンを導入する。得られたキトサン導入セルロースヒドロゲルに対して物質拡散能の評価を行う。また、軟骨細胞の培養を行い、細胞の接着性、増殖・分化を、倒立型位相差顕微鏡で観察し、キトサン導入セルロースヒドロゲルの細胞足場材料としての性能を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備備品としては、細胞培養実験を行うため、CO2インキュベーターを購入する予定である。消耗品費としては、細胞と細胞培養試薬等を購入する。また、研究討議のため海外研究協力者を招聘することも検討している。
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