セルロース・ナノファイバー(以下、CNF)の表面一層に対する反応を行うことにより、その表面一層を剥離して2種類の異なった置換様式を有するグルコース残基が交互に配列する新規セルロース誘導体を調製することを目的として実施してきた。昨年度までに、表面一層への反応により新規交互共重合セルロース誘導体の生成を示唆する結果を得る一方、CNFの表面の不均一性に起因すると考えられる低収率および小さい再現性が問題であることを指摘した。 本年度は、先ずCNFの調製方法について再検討を行った。即ち、4種類の処理(大型グラインダー処理、小型ミル処理、ホモジナイザー処理、TEMPO酸化処理)の組み合わせ、および各処理の詳細な条件を様々に変化させ、さらに分離方法(遠心分離法など)を検討して、生成したCNFを原子間力顕微鏡にて観察した。これらの結果、幅が比較的揃ったCNFの調製法を見出した(約11 nm)。 得られたCNFについて、種々のエステル化、アミド化を試行した。その結果、目的化合物である新規交互共重合セルロースと云える部分が存在すること、およびホモ重合体である部分が存在することが明らかとなった。また、表面剥離による単離により、当該化合物の単離に成功した。 以上より、当初の計画通り、CNFの表面一層のみに固液反応を行って、交互共重合セルロースと考えられる部分を調製できる可能性を示すことができた。一方、今回調製したCNFの表面は単一の層ではなく、「毛羽立ち」や複層的構成となっている部分が多く、複雑な反応生成物を与えた可能性が考えらえた。また、表面一層を剥離する過程で解重合反応が惹起することも判明した。 一方、交互特的置換オリゴ糖誘導体の調製について、合成戦略を確立し、グルコサミン/N-アセチルグルコサミンが交互に縮合したキトヘテロ六糖の合成を達成した。
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