新たに採集した和歌山県東牟婁郡すさみ町のアメリカカンザイシロアリ個体群について,マイクロサテライト解析を実施した。カリフォルニアのコロニーを外群として,近隣結合法(Neighbor-Joining method: NJ法)により系統樹を作成した。すさみ町のコロニーは宮崎県延岡市のコロニーと比較的近縁であり,同じ和歌山県内の古座川町や旧粉河町のコロニーとはそれほど近縁ではないことが示された。 アメリカカンザイシロアリの加害箇所は,小屋組や軸組など,雨漏りなどがなければ水と接触しない部材であるため,水溶性無機化合物を用いた防除・駆除が考えられる。無機化合物である八ホウ酸二ナトリウム四水和物(DOT: disodium octaborate tetrahydrate)と四ホウ酸二ナトリウム十水和物(硼砂,borax: disodium tetraborate decahydrate)の経皮および経口投与によるアメリカカンザイシロアリに対する効果を検討した。 経皮投与:DOTを10000 mg/kg塗布すると9週目で擬職蟻が全滅する場合があった。1000 mg/kg塗布では20週後でも擬職蟻の全滅は観察されなかった。硼砂塗布(10000,1000 mg/kg)処理では20週後でも擬職蟻の全滅は観察されなかった。アメリカカンザイシロアリでは,グルーミングによる薬剤伝搬効果が低いことが推察される。 経口投与:DOT・硼砂投与ともに10週間後でも全滅しなかった。硼砂を投与し10週間後に回収した死体(DOT投与では共食いが生じ死体を回収できなかった),DOTあるいは硼砂を投与し10週後に生存していた個体に含有されるホウ素量をICP-MSで定量した。死亡個体のホウ素含有量は13 mg/kg(硼砂投与),生存個体のホウ素含有量は,36 mg/kg(硼砂投与),10 mg/kg(DOT投与)であった。
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