研究課題/領域番号 |
23580239
|
研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
松永 正弘 独立行政法人森林総合研究所, 木材改質研究領域, 主任研究員 (70353860)
|
研究分担者 |
片岡 厚 独立行政法人森林総合研究所, 木材改質研究領域, チーム長 (80353639)
木口 実 独立行政法人森林総合研究所, 木材改質研究領域, 室長 (50353660)
松井 宏昭 独立行政法人森林総合研究所, 木材改質研究領域, 領域長 (90353854)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 超臨界二酸化炭素 / 木材 / 熱的改質処理 / 寸法安定性 / 抗膨潤能 / 平衡含水率 |
研究概要 |
本課題では、超臨界二酸化炭素中で熱的改質処理し、従来法よりも処理時間が短く、寸法安定性や耐朽性に優れた木材が製造できる新規処理法を開発するとともに、その反応機構を解明することを目的とする。実験にはスギの心材部分を用いた。試片寸法は50mm(L)×20mm(R)×20mm(T)で、全乾試片、20℃/64%R.H.調湿試片(平均含水率:10.7%)、20℃/87%R.H.調湿試片(平均含水率:16.7%)の3種類を用意した。同じ条件で調湿した試片4本を脚付きのステンレス製網カゴに乗せ、容量0.9リットルの耐圧容器内に入れた。容器内の空気を二酸化炭素に置換し、容器内温度・圧力を超臨界状態まで昇温・昇圧して、超臨界二酸化炭素中で攪拌しながら1時間の熱処理を行った。処理温度は180,200,220℃の3種類、処理圧力は10MPaの1種類で実験を行った。処理後、試片の全乾質量および寸法を測定し、質量減少率を求めた。そして、処理試片を20℃/33%R.H. → 20℃/64%R.H. → 20℃/87%R.H.の順でそれぞれ3週間以上調湿し、試片の質量および寸法を測定して、平衡含水率と抗膨潤能(ASE)を算出した。実験の結果、処理温度が高く、前もって高湿度で調湿した試片ほど質量減少率が大きく、平衡含水率が低くなる傾向が見られた。これは、温度が高く、試片内の水分量が多い試片ほど木材成分の分解反応が促進され、水分吸着点が減少したためと推測される。平衡含水率は220℃処理で未処理材の約1/2~1/3に低下した。さらに、熱処理試片のASEは、処理温度が高く、高湿度で調湿した試片ほどASEは高くなり、個体間のバラツキも小さくなった。ASEは220℃処理で最高約70%に達した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超臨界二酸化炭素を木材の熱的改質処理に用い、寸法安定性や耐朽性が高く均一な性能を持つ熱的改質木材の新規処理法を開発すること、および、熱的改質木材の性能発現機構を解明することを達成目標としている。現在まで、超臨界二酸化炭素中での熱的改質処理の処理条件と寸法安定性・耐湿性との関係についてまで明らかとなり、研究は当初の予定通りに進行している。また、研究成果については日本木材学会大会で発表した他、想定外の成果として、2012年3月に本課題内容で特許を出願することができた。このように、研究は順調に進行しており、問題点は特にない。
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度に引き続き、超臨界法での熱的改質処理実験を行うとともに、窒素雰囲気下で高温加圧処理する乾式処理や、水蒸気中で加熱処理する湿式処理など、従来法による木材の熱的改質処理を実施する。超臨界法および従来法で製造された熱的改質木材の性能評価として、次の測定を行う。1.寸法安定性および耐湿性の評価をさらに詳細に行う。2.処理試片を水に十分浸漬させ寸法及び体積変化を測定し、透水性を評価する。3.室内強制腐朽試験あるいはファンガスセラーによる腐朽促進試験を行う。また、試験終了後の質量測定から質量減少率を算出し、耐朽性を評価する。4.処理試片の曲げヤング率や曲げ破壊係数など強度的性質を測定する以上4項目の測定結果から、各種処理条件で熱的改質処理された木材の性能を評価し、処理条件の違いと熱的改質木材の性能との関連を調べる。また、超臨界法および従来法で製造した熱的改質木材の性能を比較し、処理方法の違いと性能との関係を調べる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
23年度は年度当初に予算全体の3割分について慎重に執行するように指示があり、予算を節約しながら使用した結果、約35万円を次年度に繰り越すこととなった。24年度は繰り越し分と合わせ、以下のような使用計画を立てている。物品費としては、超臨界法および従来法による熱的改質処理を行うために必要な実験装置や消耗品の購入や、処理試片の寸法安定性や耐湿性、透水性、耐朽性、強度特性などの性能評価を行うために必要な測定装置や消耗品の購入などを予定している。旅費としては、得られた成果の発表や最新の研究情報の収集を行うために、日本木材学会大会や木材の化学加工シンポジウム、化学工学会秋季大会などの学会に参加するための旅費を予定している。謝金としては、実験補助として非常勤職員の賃金(1ヶ月程度)を予定している。その他としては、実験装置のメンテナンス費用や論文執筆の際の英文校閲費用、学会参加費などを予定している。
|