• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

超臨界二酸化炭素中で行う木材の新規熱的改質処理法の開発および性能発現機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23580239
研究機関独立行政法人森林総合研究所

研究代表者

松永 正弘  独立行政法人森林総合研究所, 木材改質研究領域, 主任研究員 (70353860)

研究分担者 片岡 厚  独立行政法人森林総合研究所, 木材改質研究領域, チーム長 (80353639)
木口 実  独立行政法人森林総合研究所, 木材改質研究領域, 室長 (50353660)
松井 宏昭  独立行政法人森林総合研究所, 木材改質研究領域, 領域長 (90353854)
キーワード超臨界二酸化炭素 / 木材 / 熱的改質処理 / 寸法安定性 / 抗膨潤能 / 平衡含水率
研究概要

前年度の研究の結果、超臨界二酸化炭素を用いた熱処理によっても抗膨潤能(ASE)が約70%の熱処理木材が製造できることを明らかにしたことから、今年度は超臨界処理と同条件で乾式および湿式による従来法の熱処理を行い、寸法安定性や耐湿性などの性能比較を行った。
実験にはスギの心材部分を用い、予め20℃/64%R.H.で調湿した試片(平均含水率:10.7%)を熱処理した。超臨界処理では、試片の入った耐圧容器内に二酸化炭素を送り、圧力10MPaを維持しながら加熱した。そして所定温度まで達した後、攪拌しながら一定時間熱処理を行った。また、乾式・湿式処理も超臨界処理と同じ温度・時間でそれぞれ熱処理を行った。処理条件は、180℃/1h、200/1h、220℃/1h、200℃/6hの4種類で行った。処理後、試片の全乾質量および寸法を測定し、質量減少率を求めた。そして、処理試片を20℃/33%R.H.→20℃/64%R.H.→20℃/87%R.H.の順でそれぞれ3週間以上調湿し、試片の質量および寸法を測定して、平衡含水率とASEを算出した。
実験の結果、同じ処理条件で比較した場合、乾式処理・湿式処理よりも超臨界処理の方が高い質量減少率を示した。また、平衡含水率は超臨界処理の方が低く、ASEは超臨界処理で最大約64%だったのに対し、乾式・湿式処理では約40%であり、超臨界処理の方が高い寸法安定性を示した。これは、超臨界処理試片の方が短時間で木材全体が加熱され、木材成分の分解反応が速やかに進行し、水分吸着点がより多く減少しているためと推測される。一方、耐朽性および強度的性質については各処理法の間に大きな差異は見られなかった。これらの性質については、超臨界法と同程度の質量減少率またはASEを有した従来法の熱処理木材を準備し、比較を行う予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

超臨界二酸化炭素を木材の熱的改質処理に用い、寸法安定性や耐朽性が高く均一な性能を持つ熱的改質木材の新規処理法を開発すること、および、熱的改質木材の性能発現機構を解明することを達成目標としている。今年度は、超臨界二酸化炭素中での熱的改質処理の処理条件と同条件で、窒素雰囲気下で高温加圧処理する乾式処理や、水蒸気中で加熱処理する湿式処理など、従来法による木材の熱的改質処理を実施した。そして、超臨界法および従来法で製造された熱的改質木材の性能評価を行い、処理方法の違いと性能との関係を明らかにしており、研究は当初の予定通りに進行している。また、研究成果については日本木材学会大会で発表した他、第42回木材の化学加工シンポジウムでの招待講演において研究成果の一部を発表した。このように、研究は順調に進行しており、問題点は特にない。

今後の研究の推進方策

熱的改質処理によって木材中のヘミセルロースは分解し、セルロース結晶化度は増加すると報告されている。そこで、処理した木材の試片表面から中心部までの数カ所について、次の測定を行い、処理による反応が木材表面からどの程度の深さまで進行しているか分析する。1.木材成分分析によるセルロース・ヘミセルロース・リグニンの成分組成比の測定。2.フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いたヘミセルロース由来吸収バンドの測定。3.X線回折によるセルロースの結晶化度の測定。
以上の結果を基に、従来法での反応状態との比較や、各種超臨界処理条件での反応状態との比較を通して、超臨界法および従来法による熱的改質処理の反応機構とその差異を明らかにし、熱的改質木材の性能発現機構を解明する。

次年度の研究費の使用計画

24年度は予算を効率的に使用した結果、約47万円を次年度に繰り越すこととなった。24年度は繰り越し分と合わせ、以下のような使用計画を立てている。
物品費としては、超臨界法および従来法による熱的改質処理を行うために必要な実験装置や消耗品の購入や、処理試片の性能評価および性能発現機構の解明に必要な測定装置や消耗品の購入などを予定している。
旅費としては、得られた成果の発表や最新の研究情報の収集を行うために、国際シンポジウム(WOODCHEM 2013)や日本木材学会大会、木材の化学加工シンポジウム、化学工学会秋季大会などに参加するための旅費を予定している。
謝金としては、実験補助として非常勤職員の賃金(2ヶ月分程度)を予定している。
その他としては、実験装置のメンテナンス費用や論文執筆の際の英文校閲費用、学会参加費などを予定している。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013 2012

すべて 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] 超臨界処理法で熱処理した木材の従来法との性能比較2013

    • 著者名/発表者名
      松永正弘、片岡厚、木口実、川元スミレ、松永浩史、小林正彦、松井宏昭
    • 学会等名
      第63回日本木材学会大会
    • 発表場所
      岩手大学(盛岡市)
    • 年月日
      20130327-20130329
  • [学会発表] 超臨界CO2処理による木材の改質・高機能化2012

    • 著者名/発表者名
      松永正弘
    • 学会等名
      第42回木材の化学加工シンポジウム
    • 発表場所
      キャンパスプラザ京都(京都市)
    • 年月日
      20121025-20121026
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi