(1)軟弱地盤対策に用いた丸太の5年経過後の健全性調査:5年前に人工の軟弱地盤を作製し,そこに丸太を打設し軟弱地盤対策を実施した.設計は,上載荷重を厚さ0.5mのサンドマットで受け,それをさらに丸太が受け,周面摩擦力で支えるというものである.サンドマットは,丸太頭部に位置し,地下水変動もあることから,その土質特性と生物劣化の状況が課題であった.盛土を除去し,打設した丸太の頭部を全数目視観察するとともに,丸太を採取し縦圧縮試験を実施した.サンドマットには,礫材も用いたが,いずれも極めて健全であることが確認された.通水性の高い土質であっても,地中にあり,地下水位変動域にあるような場合は,5年程度では生物劣化など生じないといえる. (2)地中における木材の生物劣化対策設計チャートの作成:数多くの現地調査結果,既往文献の調査結果,室内の促進試験結果などから,地中における木材の腐朽の可能性を判断するチャートを作成した.このチャートが示す主な内容は,以下である.木材は地下水変動域の下限以深では長期健全性を有する.地中では毛管水頭により地盤が飽和されているので,自由水面以浅のこのような領域でも長期健全性を有する.地下水位変動域の上限以浅では木材は生物劣化を生じる場合がある.地下水位上限以浅であっても,1×10-9m/sより小さい透水係数の地盤では木材は長期耐久性を有する.地下水位変動域では,地下水位変動域上限よりもはるかに生物劣化の速度は遅い. (3)生物劣化対策技術の開発:設計チャートより,地下水位上限以浅であっても透水係数が1×10-9m/s以下であれば長期健全性有するので,次の2通りの対策方法を開発した.・膨潤性の高いベントナイト混合土で地中打設後の丸太頭部を覆う.・セメントポリマー系の材料を丸太頭部に塗布し,これを打設する.両者ともに実施工を行い,施工性は良好であることを確認した.
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