研究課題
本研究は、サケ科魚類のカットスロートトラウトを主要なモデルに用い、魚類の卵母細胞における油球形成機構を分子レベルで明らかにすることを目的としており、本年度は以下の項目について解析した。1. リポタンパクの蛍光標識法の確立:先ず、カットスロートトラウトの血漿から段階的超遠心法を用いて各種リポタンパク(超低密度リポタンパク、VLDL;低密度リポタンパク、LDL;高密度リポタンパク、HDL)を精製した。次に、各精製リポタンパクの脂質部分をグラスビーズ法により緑色蛍光標識脂肪酸(BODIPY FL C16)で標識する方法を確立した。また、各リポタンパクのアポタンパク部分は、市販のキットにより赤色蛍光物質(Alexa 594)で標識できることを確認した。さらに、こられ脂質とタンパクの標識を同時に行って、二重標識されたリポタンパクを作製できることも確かめられた。2. カットスロートトラウト卵濾胞の生体外培養系の確立:前卵黄形成期(油球期)の卵巣を摘出し、ピンセットを用いて卵濾胞を単離した。単離された卵濾胞を、市販のL-15を基本とした培養液(0.5%ウシ血清アルブミン、各種抗生物質含有、pH 7.4)中で15°Cで培養したところ、少なくとも48時間までは形態と機能を維持できることが確認された。この培養系を用いて、1で作製した蛍光標識リポタンパクの卵濾胞への取り込みを調べた結果、脂質とタンパクの双方とも、時間経過とともに卵濾胞への取り込み量が増加した。さらに、組織切片による観察から、各種リポタンパクのうちVLDL由来の蛍光標識脂質のみが卵母細胞内の油球に取り込まれることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究計画のなかで一番の懸案だった、リポタンパクの蛍光標識法が確立できたため、それに不随する計画の全てを順調に進めることができた。
油球形成機構を調べるための、蛍光標識リポタンパクを用いた卵濾胞の生体外解析系が確立できたため、今後はこれを用いて詳細な解析を行っていく。また、蛍光標識リポタンパクを生体内に投与する方法についても検討する。さらに、サケ科魚類以外の魚種(ヨウジウオ等)を用いて、魚類における油球形成機構の共通・相違点についても調べる予定である。
該当なし。
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Fish Physiology and Biochemistry
巻: 39 ページ: 29-32
10.1007/s10695-012-9612-6