研究課題
本研究は、サケ科魚類のカットスロートトラウトを主要なモデルに用い、魚類の卵母細胞における油球形成機構を分子レベルで明らかにすることを目的としている。前年度までに、卵母細胞中の油球がVLDL中の脂質に由来することを初めて実証したが、本年度は以下の項目について解析した。1. 卵巣における油球形成関連因子の発現解析:卵母細胞での油球形成(卵濾胞におけるVLDL代謝)に関与することが予想される各因子(リポタンパクリパーゼ:LPL、脂肪酸輸送体、膜結合型脂肪酸結合タンパク、細胞内脂肪酸結合タンパク)について、卵形成過程に伴う卵巣での各mRNA発現量の変化を調べた。その結果、油球期の卵巣で高く発現している因子群と、卵黄形成の進行と共に増加する因子群が見られた。これらの結果から、各因子群は異なる機構で油球形成に関与していることが示唆された。2. 卵巣での油球形成関連因子の発現に及ぼす各種ホルモンの影響:卵巣器官培養系を用いて、種々のホルモンが上記の各因子のmRNA発現に及ぼす影響を調べた。その結果、LPL mRNAにおいてのみインスリン様成長因子-I(IGF-I)による発現誘導が認められ、IGF-IがLPLの発現調節を介して卵母細胞での油球形成に関与していることが示唆された。3. メダカとヨウジウオにおける蛍光標識VLDL投与実験:メダカ雌とヨウジウオ雌に、脂質部分とタンパク部分をそれぞれ異なる蛍光物質で標識したVLDLを生体内投与し、卵巣における二重標識VLDLの代謝を解析した。その結果、双方とも同様の結果が得られ、VLDLの脂質部分は卵母細胞内の油球に蓄積されるが、タンパク部分は卵母細胞外に留まることが示された。これらの結果から、VLDLが卵母細胞外で代謝され、それにより生じた脂肪酸が卵母細胞内に取り込まれて油球として蓄積されるという機構の魚類における普遍性が示唆された。
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Comparative Biochemistry and Physiology Part A
巻: 166(2) ページ: 263-271
10.1016/j.cbpa.2013.06.026
Comparative Biochemistry and Physiology Part B
巻: 166(1) ページ: 81-90
10.1016/j.cbpb.2013.07.005