研究概要 |
野外調査として、国内では小笠原にて、また海外ではフィリピンにて標本の採集を行い、小笠原では主に成魚(オガサワラヨシノボリRhinogobius sp BI:30個体、ボウズハゼSicyopterus japonicus:1個体)を、フィリピンでは主に仔魚(ボウズハゼ亜科とヨシノボリ属、計300個体以上)を採集した。今後、成魚の標本は系統類縁関係もしくは集団構造に使用し、仔魚は海洋生活期の推定に用いる。 過去(2003年6月~2006年3月)に和歌山県太田川で採集したボウズハゼ、計171個体のメスの体長、体重、生殖腺のデータを使用した。体重と生殖腺の重量比から生殖腺指数を算出した結果、メスの生殖腺指数は0.0-20.8の範囲であり、7・8月の夏にのみ高い値(平均6.5)を示した。次に、各月2-5個体について、ヘマトキシリン・エオシンの二重染色による卵巣の組織学的観察を行った結果、7・8月に採集された個体のみ、第二次卵黄球期に達していた。7・8月に採集された10個体について、その産卵期に生み出されるであろう卵径200μm以上の大型卵数を推定したところ、10,800-52,500粒であり、体長とその孕卵数の間には正の相関が認められた。 熱帯に広く分布するボウズ亜科7属の系統類縁関係を、初めて分子遺伝学的手法よって解き明かした。6属(Stiphodon, Lentipes, Cotylopus, Sicyopterus, Sicydium, Akihito)はそれぞれ単系統性が示された。しかし、Sicyopus属は異なる二つのクレードにまとまった。よって、一つの属はSicyopusではなく、Smilosicyopusが有効な属名と考えた。それぞれの属における回遊特性がさらに明らかとなり、この系統結果と比較することにより、ボウズハゼ亜科の両側回遊の進化過程を説明できると考える。
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