研究課題/領域番号 |
23580254
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
飯島 憲章 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (90136143)
|
研究分担者 |
古澤 修一 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (80130037)
|
キーワード | 自然免疫 |
研究概要 |
本研究の目的は、冷水病菌の侵入経路にあたる体表粘液や鰓、さらには冷水病菌の主な感染部位である脾臓や肝臓で産生される構成分泌型及び誘導分泌型の抗菌ペプチドを、その電荷・疎水性・分子量に基づく多次元クロマトとLC-MSを併用して網羅的に解析し、その全体像を把握すると共に、湖産系及び海産系アユの冷水病菌に対する感受性の違いが “抗菌ペプチドの種類と産生量の違いによる”ことを証明することにある。本研究を実施することにより、湖産系及び海産系アユの組織で“構成的あるいは、冷水病菌感染により誘導的に合成・分泌される抗菌ペプチドの種類と構造に関する全体像”を把握することができるので、アユの自然免疫機構を解明する上で重要な情報を提供できる。さらに、アユの冷水病菌に対する感受性の差が抗菌ペプチドの種類や産生量、冷水病菌に対する抗菌活性の違いによることを証明できれば、冷水病菌に対する耐病性獲得の機構を明らかにすることが可能となる。 1) 平成24年度では、海産系アユ脾臓の粗抽出液を酸性、弱塩基性及び強塩基性画分に粗分画し、各画分の抗菌活性を測定したところ、強塩基性画分に最も高い抗菌活性が認められた。そこで、この画分をゲル濾過カラムクロマト、2段階の逆相HPLCにより抗菌ペプチドを単離した。さらに、プロテインシークエンサー並びにMS/MS解析により本ペプチドのアミノ酸配列を明らかにし、plecoglosin-1(PSLKPKLLKYD)と命名した。 2) アユ脾臓抽出液の弱塩基性画分にも抗菌活性が確認されたことから、ゲル濾過カラムクロマト、2段階の逆相HPLCにより抗菌ペプチドを精製すると共に、プロテインシークエンサー並びにMS/MS解析によりアミノ酸配列を明らかにし、plecoglosin-2(PDGGFRLLGD)と命名した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の段階において、海産系アユの脾臓より2種の新規抗菌ペプチドを単離し、さらに一次構造を明らかにすることに成功していることから、研究目的の達成度は高いと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
1. 平成24年度までの実験により、海産系アユの脾臓には2種の新規抗菌ペプチドが存在することが明らかとなり、さらにデーターベース検索の結果hepcidinの存在も明らかになったことから、ペプチド合成機により3種の抗菌ペプチドを合成した後、逆相HPLCにより精製する。これら合成抗菌ペプチド標品を用い、F. psychrophilum, A. salmonicidaなどの魚病細菌に対する殺菌活性を測定する。 2. 合成Plecoglosin-1,-2及びhepcidinを標品とし、LC-MSにより各抗菌ペプチドに対する検量線を作成する。次いで、湖産系、海産系及び冷水病菌感染耐過前後のアユ組織より調製した酸抽出液を用いてLC-MSにより分析し、検量線から抗菌ペプチドの濃度を求める。この抗菌ペプチド定量実験により、湖産系、海産系及び冷水病菌耐過アユが産生する抗菌ペプチドの種類と産生量(組織中の濃度)を明らかにし、冷水病菌に対する抵抗性獲得との関連性を考察する。 3. 合成Plecoglosin-1,-2及びhepcidinとKLHとのコンジュゲーションを作成後、ウサギに免疫することにより、抗血清を得る。合成ペプチド結合sepharoseを用いて特異抗体を精製した後、アユ組織における各抗菌ペプチドの組織・細胞内局在を明らかにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
未使用見込額は平成25年度の研究における消耗品費として使用する予定である。合成抗菌ペプチド精製用の分離用カラム、試薬類、ガラス器具類及びプラスチック器具類の購入に950千円を計上する。なお、合成抗菌ペプチドに対する特異抗体の作成費用に300千円を計上する。旅費と謝金にそれぞれ50千円を計上しており、アユの飼育と冷水病菌数の測定に300千円を計上している。
|