研究概要 |
本研究の目的は、冷水病菌の侵入経路にあたる体表粘液や鰓、さらには冷水病菌の主な感染部位である脾臓や肝臓で産生される構成分泌型及び誘導分泌型の抗菌ペプチドを、その電荷・疎水性・分子量に基づく多次元クロマトとLC-MSを併用して網羅的に解析し、その全体像を把握すると共に、湖産系及び海産系アユの冷水病菌に対する感受性の違いが “抗菌ペプチドの種類と産生量の違いによる”ことを証明することにある。本研究を実施することにより、湖産系及び海産系アユの組織で“構成的あるいは、冷水病菌感染により誘導的に合成・分泌される抗菌ペプチドの種類と構造に関する全体像”を把握することができるので、アユの自然免疫機構を解明する上で重要な情報を提供できる。さらに、アユの冷水病菌に対する感受性の差が抗菌ペプチドの種類や産生量、冷水病菌に対する抗菌活性の違いによることを証明できれば、冷水病菌に対する耐病性獲得の機構を明らかにすることが可能となる。 1) H23及びH24年度の研究により、アユ脾臓中には2種の抗菌ペプチド、plecoglosin-1及びplecoglosin-2が存在することが明らかになった。そこで、2種の抗菌ペプチドplecoglosin-1,-2を化学合成し、逆相HPLCにより精製標品を得た。次いで、精製標品を用い、B.Subtilis, E. coliに加え、魚病細菌であるV. anguillarum, P.plecoglossicida, E. ictaluri、さらにはアユ冷水病菌の原因菌であるF. psychrophilumに対する殺菌活性を検討した結果、いずれの魚病細菌に対しても40~320 マイクロモルの濃度で50%以上の殺菌活性を示すことが明らかとなった。 2) アユ脾臓Plecoglosin-1及びplecoglosin-2のN末側にCGGを付加したペプチドをそれぞれ作成した後、ウサギに免役し、抗血清を調製した。次いで、CGG付加ペプチド結合カラムを用いて抗体を精製した。
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