研究課題/領域番号 |
23580255
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
小田 達也 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 教授 (60145307)
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研究分担者 |
山口 健一 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 准教授 (90363473)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 赤潮 / プランクトン / 毒性 / バイオアッセイ / 細胞培養 |
研究概要 |
一般に赤潮生物の毒性試験に用いられている魚類や貝類など海洋生物の飼育維持には特別な施設が必要であり、実験の高コスト化や規模の大型化の原因となっている。多くの場合、この様な試験動物の問題が赤潮研究、特にその毒性試験遂行の妨げとなっている。そこで、本年度の研究においては赤潮生物の毒性の検出あるいは、赤潮生物が産生する毒性因子を解析するための、通常の実験室でも対応できる高感度でしかも簡便なマイクロバイオアッセイ法の確立とその有効性の検証を目的として、特に培養細胞での実験を実施した。これまでの研究により、その重要性が明らかとなっている赤潮原因種であるシャットネラ、コクロディニウム・ポリクリコイデス、カレニア・ミキモトイ、ヘテロカプサ・サーキュラリスクアーマを対象とした。培養細胞を用いて解析については、これまでの研究で確立した毒性因子検出方法である、種々の動物種の赤血球(溶血活性)、ワムシやアルテミアなどの動物プランクトンに対する毒性、海洋細菌(ビブリオ属)に対する毒性との比較実験も合わせて実施した。その結果、Vero細胞に対する赤潮プランクトンの直接暴露により、プランクトン細胞濃度及び暴露時間に応じて、Vero細胞からLDHの漏れが観察された。LDH(乳酸脱水素酵素)は細胞質マーカー酵素であり、LDHの細胞外への漏れは細胞死あるいは細胞膜の損傷の結果であると考えられる。LDHは比較的微量でも検出可能であることから、本法は赤潮プランクトン暴露によるVero細胞のダメージを把握推定に有効な方法である事がわかった。一方、遠心分離によって調整した赤潮プランクトン培養上清や超音波処理で調整した破壊した細胞浮遊液ではVero細胞に対する影響は著しく低下している事がわかった。興味ある事にLDH細胞外放出の時間経過や強さは赤潮プランクトン種により大きく異なることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
赤潮生物が産生する毒性因子を解析するための、高感度でしかも簡便なマイクロバイオアッセイ法の確立に関しては、これまでの研究が基礎となったことから、本年度はさらに方法論に関するさらなる進展をすることができたと考えられる。これまで実施してきた、種々の動物種の赤血球(溶血活性)、ワムシやアルテミアなどの動物プランクトンに対する毒性、海洋細菌(ビブリオ属)に対する毒性も、それぞれに赤潮プランクトンの種類に応じて、興味ある知見が得られたことも、本研究の推進の一部を担ったと考えられる。培養細胞を用いた赤潮プランクトン暴露実験ではLDH放出法を導入したことが本研究の新展開のきっかけとなったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
甚大な漁業被害をしばしば引き起こすことが知られている赤潮原因種であるシャットネラ、コクロディニウム・ポリクリコイデス、カレニア・ミキモトイ、ヘテロカプサ・サーキュラリスクアーマについて、マイクロバイオアッセイ法で検討した結果、アッセイ法やそれぞれの赤潮種により異なる結果が得られた。溶血や細胞毒性の強弱の他、活性発現に至る時間経過などのキネティックスが異なっていたことから、毒性機構の詳細や背景にある毒性因子は赤潮種により極めて異なると推定された。従って、今後はそれぞれの赤潮種に関してさらに複数のマイクロバイオアッセイ法を駆使して詳細な解析を実施していく予定である。さらに、マイクロバイオアッセイ法での結果がどの程度実際の魚類や貝類などの海洋生物に対する致死作用と相関するか検証する実験も可能な限り実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験に必要な分析機器や設備は現有のものでほぼ対応可能である。従って、マイクロバイオアッセイ法実施に関連して必要な細胞培養用の培地、アッセイに必要な試薬や培養用プラススティックウエア等の消耗品費約50万円、研究成果の学会発表に必要な旅費等として40万円、論文投稿掲載に必要な20万円、その他として10万円とする。
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