研究課題/領域番号 |
23580257
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
酒井 正博 宮崎大学, 農学部, 教授 (20178536)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | サイトカイン / フグ / マルチプレックスPCR / 免疫賦活剤 / 自然免疫 |
研究概要 |
サイトカインは、免疫系の数々の調節に関与する低分子のタンパク質で魚類でも数多くが同定されている。このサイトカインの発現の動態を調べることによって免疫応答(特に自然免疫)を解析することが可能である。本研究では、本システムを用いて、LPS、polyI:Cおよびimiquimodで処理したフグ頭腎細胞でのサイトカイン遺伝子の発現について検討を行った。(方法)本システムで測定できるサイトカイン遺伝子は、IL-1β、IL-2、IL-4/13A、IL-4/13B、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12p35、IL-12p40、IL-15、IL-17A/F-3、IL-18、IL-21、IFNγ、type1-IFN、CSF1β、TNF α、TNF ΝおよびTGF-β1である。これら遺伝子についてGenomeLab GeXP eXpress Profiler softwareによってプライマーを設計し、全ての遺伝子が発現しているRNAを用いて、各遺伝子のプライマーについての特異性の確認を行った。反応は、全ての遺伝子プライマーをミックスし同一チューブ内でRT-PCRを行った。この生成物をキャピラリーシークエンサー(CEQ8000)にて電気泳動することで、Multiplex RT-PCRにおける競合反応の確認を行った。次に、フグ頭腎細胞をLPS、polyI:Cもしくはimiquimodで処理し、経時的にサイトカイン遺伝子の発現動態を解析した。(結果)LPS処理後直ちに炎症性サイトカインとして知られるIL-1βなどの高い発現が確認された。その後24時間目以降にIL-10の発現の上昇が確認された。polyI:Cで処理した頭腎細胞では、処理後12時間目にtype1-IFNの高い発現が確認された。一方、Imiquimod区では、IL-12p35とIL-21の高い発現が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、フグの遺伝子データーベースより、19種類のサイトカイン遺伝子を見いだし、これらの遺伝子をクローニングすることに成功した。さらに、これらの遺伝子の情報を基に、プライマーを作成し、マルチプレックスRT-PCRシステムの構築に成功した。今回、構築したシステムは、それぞれのサイトカイン遺伝子に特異的であり、さらに、濃度を調節することによって、定量を行う事が可能となった。 次に、このシステムが実際に機能するかを確認するために、LPS、polyI:Cおよびimiquimodで、フグの頭腎細胞を処理し、そのサイトカイン遺伝子の発現を検討した結果、ほ乳類とほぼ同等のサイトカイン遺伝子の発現が確認することができた。本研究計画では、ここまでを2年間で達成する予定であったが、今年度に計画に記載されている事項を行う事ができた。したがって、「当初の計画以上に進展している」との結論に達した。
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今後の研究の推進方策 |
今回に研究で、フグのサイトカインの発現を網羅的に解析することができるマルチプレックスPCRシステムの構築をおこなった。今後は、このシステムを用いて、各種免疫賦活剤やプロバイオテクスを投与したフグにおけるサイトカイン遺伝子の発現について検討する。現在、特にウイルス感染や細胞内寄生細菌に有効な免疫賦活剤やプロバイオテクスは知られていない。これらのスクリーニングを通して、ウイルス感染や細胞内寄生細菌に有効な免疫賦活剤やプロバイオテクスを見いだす予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、以下の研究を行う予定である。1 ほ乳類でプロバイオテック効果を示すことが知られている乳酸菌を、フグに強制経口投与させ、その後のサイトカイン遺伝子の発現を測定できるマルチプレックスPCRシステムを用いて、サイトカイン遺伝子の発現を検討する。2 魚類に免疫賦活効果を示すことが知られているフコダイン、ラクトフェリン、グルカンをフグに強制経口投与させ、その後のサイトカイン遺伝子の発現を測定できるマルチプレックスPCRシステムを用いて、サイトカイン遺伝子の発現を検討する。これらの実験を行うには、マルチプレックスPCRの試薬として、PCRのプライマー、タックポリメラーゼが必要である。さらに、今回使用するフグとそれを飼育するために水槽が必要である。そして、プロバイオテック効果を示す細菌(乳酸菌)、各種免疫賦活剤(グルカン、フコダイン、ラクトフェリン)が必要となる。今回の研究は、多くの研究者にアピールする必要があるので、国際学会に参加して積極的にデータを公表する予定である。従って、国際学会の参加費が必要である。
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