研究課題
昨年度、フグのサイトカイン発現を網羅的に測定出来るMultiplex RT-PCR法を開発し、それがフグの自然免疫応答を測定するのに極めて有益であることを突き止めた。本年度は、このサイトカイン発現測定のMultiplex RT-PCR法を用い、プロバイオを投与したフグのサイトカイン反応の測定を行った。(方法)プロバイオとして、モンゴル産の乳製品から分離されたLactobacillus patacasei(strain 06TCa22)株とL. plantarum(strain 06CC2)株を用いた。これらの株の死菌をフグの頭腎細胞に作用させて、その後サイトカイン応答を、Multiplex RT-PCR法にて測定を行った。今回の実験では16種類のサイトカインの測定を行った。(結果)L. patacase 06TCa22株で作用させたフグの頭腎細胞は、作用後1から12時間目に、炎症性サイトカインであるIL-1b, IL-6, IL-17A, TNF-a,TNF-Nの遺伝子とインターフェロンγの発現の増加が確認された。抗ウイルス作用を示すIL-12とIL-18遺伝子の発現の増加も作用後1-4時間目に確認された。一方、L. plantarum strain 06CC2株を作用させたフグの頭腎細胞においても、同様にIL-1b,IL-6 TNF-a遺伝子の発現の増加が見られたが、IL-17Aの発現はまったく確認することが出来なかった。抗ウイルス作用を示すIL-12とIL-18遺伝子は、作用後1-48時間と長期にわたって発現の上昇が確認された。このように、これらのプロバイオティクスは、フグの頭腎細胞に直接作用し、自然免疫に重要なサイトカインを刺激することが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
昨年度構築したフグのサイトカイン発現を網羅的に測定出来るMultiplex RT-PCR法を用い、プロバイオティクス効果を測定することが可能となった。これにより、多くの魚を用いることなく腎臓の細胞を用いるだけで、自然免疫応答が測定出来ることを見いだした。
今回は、in vitroの系で、プロバイオティクスの効果を測定したが、これが実際の自然免疫応答と結びついているかを検討する必要がある。そのためには、今回、有効性を示したプロバイオティクスを用い、実際にフグに投与して、サイトカイン発現を網羅的に測定出来るMultiplex RT-PCR法を用い、サイトカイン応答を測定する必要がある。さらに、同時に、食細胞の活性化や実際の感染実験で、自然免疫応答の上昇を確認する予定である。
次年度は、以下の研究を行う予定である。1 今年度用いたプロバイオティクスの菌(L. patacasei 06TCa22株とL. plantarum 06CC2株)を、フグに投与し、その後のサイトカイン遺伝子の発現の動態を、Multiplex RT-PCR法で測定する。2 上記のフグを用い、食細胞の貪食能、NBT反応、リゾチーム反応を測定する。3 さらに、このプロバイオティクスを投与したフグを、病原菌で感染実験し、その生存性を測定する。今回の研究によって、サイトカイン遺伝子の発現を調べることによって、自然免疫応答を測定出来ることを明らかにするものであり、研究結果を広く多くの研究者にアピールする必要がある、従って、積極的に、国際学会で発表する必要がある。
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Fish and shellfish Immunology
巻: 34 ページ: 1170-1177