研究課題/領域番号 |
23580259
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
本村 浩之 鹿児島大学, 総合研究博物館, 教授 (90433086)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | オーストラリア |
研究概要 |
マダラフサカサゴ属は形態的に6つの類似種群(species complex)で構成される.本年度は最も種数が多く,最も古く記載された名義種を含むSebastapistes strongia complexの分類学的研究を行った.Sebastapistes strongia complexは涙骨下縁に2棘があり,その後方棘が単尖頭であること,額棘がないこと,眼下骨隆起が1本であること,および口蓋骨がないことなどによって特徴付けられる.S. strongia Cuvier in Cuvier and Valenciennes, 1829 (タイプ産地:カロライン諸島)は最も古い本属の名義種であり,インド・太平洋広域に分布する有効種であることを確認した.原記載やタイプ標本調査から9名義種がS. strongiaの新参シノニムであることが明らかになった.同complexのS. taeniophrysはこれまでフィリピンからのみ知られていたが,実際はインド・西太平洋に広く分布し,本属魚類の中で唯一砂泥底に生息することが明らかになった.一方, S. galactacmaは西太平洋に広く分布していると考えられていたが,ハワイ諸島固有の種であることが分かった.これら3種の形態的特徴も明らかにすることができた。さらに,琉球列島を中心にマダラフサカサゴ属のDNA分析用サンプルの収集を行った.また,オーストラリア人研究者を招へいし,来年度以降の共同研究の打ち合わせ,および今年度の成果の確認作業を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画はほぼ計画通りに進めることができた.研究の成果は当初の目標どおりの結果を出すことができたが,訪問予定だったドイツの博物館のコレクションが移転工事中になってしまったため、このコレクションの調査は来年度に行う予定である。そのため、「おおむね順調」を選んだ.
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今後の研究の推進方策 |
マダラフサカサゴ属の残りの5類似種群の調査を行うと同時に,未記載種を記載する.5類似種群(S. coniorta species complex,S. cyanostigma species complex,S. fowleri species complex,S. mauritiana species complex,S. pascuensis species complex)はそれぞれ有効種1~2種で構成されS. strongia species complexと比べると比較的小規模な種群である.予備研究の結果,最も名義種が多いS. cyanostigma species complexは1有効種でScorpaena albobrunnea Günther, 1874,Scorpaena kowiensis Smith, 1935,Scorpaena aqabae Fowler and Steinitz, 1956の3名義種が新参シノニムとなる可能性がある.予備研究の結果,少なくとも日本,オーストラリア,モルジブから3未記載種が発見されており,本研究でさらに多くの未記載種が発見されると予想される.研究の過程で得られた新知見は随時論文として公表する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度はマダラフサカサゴ属のタイプ標本が保管されているオーストラリアの博物館,アメリカとヨーロッパの博物館を訪問し,学名の決定を行う.また,マレーシア・トレンガヌ大学の研究者を短期間招へいし,長期的にDNA用サンプルの現地での採集をお願いするために採集や固定の方法を教授する.旅費以外では,成果が得られたグループから随時論文を公表するため,英文校閲費や出版費として使用する.
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