インド・太平洋の温帯~熱帯浅海域に広く分布するフサカサゴ科マダラフサカサゴ属の分類学的研究を行った.本属は浅海域生態系の中で重要な位置を占めているにもかかわらず,分類学的にきわめて混乱しており,これまで正確な同定を行うことが困難であると考えられていた分類群である.本研究では,32名義種がマダラフサカサゴ属に帰属することが明らかになった.これら32名義種のタイプ標本および分布域広域から採集された一般標本を調査・解析したところ,10名義種が有効種であることが分かった.また,本研究の調査によって3未記載種(オーストラリア,日本,モルジブ)が発見された.これら13種の地理的変異を把握し形態に基づく検索表を作成するために,最終年度は本属魚類が最も多く保管されているアメリカのスミソニアン自然史博物館を訪問し,大量の一般標本を調査・解析した.さらに,本属が単系統であることを明らかにし,各種の分布パターンも把握することができた.現在,有効種各種の地理的変異,成長による形態変化,性的二型,および分布域などの情報を網羅したモノグラフの出版準備をしている.
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