研究課題/領域番号 |
23580262
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研究機関 | 八戸工業大学 |
研究代表者 |
藤田 敏明 八戸工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30396311)
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キーワード | 卵形成 / 卵膜形成 / コリオジェニン / ZP / 魚類 / コイ |
研究概要 |
魚類卵膜の形成機構は種によって異なりサケやヨーロッパヘダイでは肝臓が、コイ科魚類では卵巣がその合成器官であるとされている。コイでは、卵巣で発現する2種類の卵膜蛋白遺伝子(zona pellucida protein BおよびC;ZPBおよびZPC)がクローニングされているものの、肝臓で発現する卵膜蛋白前駆物質(コリオジェニンHおよびL;Chg HおよびChg L)を検索した例はない。本年度は、コイ科魚類Chgの検索を目的として肝膵臓より遺伝子のクローニングを試みた。 Chg HおよびLに対する縮重プライマーを設計してRT-PCRを行い、特異的増幅産物を得た。得られた産物の塩基配列を基に遺伝子特異的プライマーを設計し、5’-RACEを行ったところコイChg Hと思われる約600bpの断片(H-H)と約400bpの断片(H-L)ならびにコイChg Lと思われる約800bpの断片(L)が得られた。これら5’-RACEで明らかにした配列とRT-PCRで得られた配列を合成した結果、H-H(1,092bp)、H-L(657bp)およびL(935bp)はそれぞれシグナルペプチドを含む360、218および311残基のアミノ酸をコードしていた。H-HおよびH-Lの演繹アミノ酸配列はZPBファミリーに特徴的なTFFドメインおよびZPドメインのN末端側の一部を含んでおり、両者ともコイZPBと高い相同性を示した。また、Lの演繹アミノ酸配列には、シグナルペプチドの下流にZPドメインのN末端側部分が観察され、コイZPCと高い相同性を有していた。 以上、コイ肝膵臓から5’末端を含むChg HならびにLと思われる遺伝子断片を単離した。このことから、卵巣で主要な卵膜蛋白を合成するコイ科魚類においても卵巣外でChgが合成されていることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発現量の低さやバリアント遺伝子の多さなどからChg遺伝子のクローニングに時間を要し、全長のクローニングには至らなかったが、コイ雌の卵巣外で卵膜蛋白が発現している可能性が非常に高いことは明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従って、様々な魚種における卵膜蛋白遺伝子のクローニングを行う。この研究活動内で、H24年度に明らかにできなかったコイChg遺伝子の全長も解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定に従って、プライマー、遺伝子解析に関わる酵素・キットなどの消耗品を中心に使用する。
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