研究概要 |
魚類卵膜蛋白をコードする遺伝子は、いくつかの魚種から単離されている。しかし、これまで観察されている魚種はメダカ、コイ、キンギョ、サケなどの淡水魚が主であり、十分な情報が得られているとは言い難い。本年度は、海産魚における卵膜蛋白の一次構造を明らかにするため、マハゼ(Acanthogobius flavimanus)からの遺伝子クローニングを行った。 供試魚は、八戸市舘鼻漁協で採集し肝臓ならびに卵巣片よりcDNAを合成した。これを鋳型とし、魚類コリオジェニン(Chg HおよびChg L)ならびに卵膜蛋白(ZPBおよびZPC)の塩基配列を基に作成した縮重プライマーを用いたRT-PCRおよびRACE法により全長を含む遺伝子をクローニングした。マハゼにおける2型Chg H遺伝子の全長はpoly Aを含む1,724bpおよび1,687bpであり、それぞれ550および461残基をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を有していた。ORFのサイズより、便宜的に前者をChg H1、後者をChg Lとした。一方、Chg Lでは471残基をコードする1,630bpの遺伝子ならびにそのスプライシングバリアントと思われるやや短い遺伝子(1,541bp、455残基)が単離された。同様の手法で、マハゼ卵巣で発現するZP遺伝子の単離を試みたが、今回は特異的増幅産物は観察されなかった。今後、発達段階の異なる卵巣を用いた解析などが必要であると思われた。得られたChg Hの演繹アミノ酸配列を他魚種のもとと系統解析した結果、マハゼChg H1はヨーロッパヘダイZPBb、メダカChg HおよびメナダChg Hの相同蛋白であり、Chg H2は、ヨーロッパヘダイZPBa、メダカChg Hminorの相同蛋白であることが示唆された。 以上、マハゼの3型Chg遺伝子の全長をクローニングし、系統解析した。
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