2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震により、研究対象としていた生物やその生息環境は大攪乱を受けた。また、東京湾についても、津波、液状化、地盤沈下等によりフィールドは地震前とは異なっていた。そのため研究初年度の平成23年度はフィールド調査がほとんど行えず、研究期間を1年延長した。また、本研究申請時と採択後では対象生物の棲息状況は大きく変わっていることが予想されたため、平成24年度には外来生物のサキグロタマツメタとアサリの地震・津波後の棲息状況の把握につとめ、その基礎データをもとにその後の研究を行った。本年度は引き続き、宮城県、福島県、東京湾を対象に調査を行い下記の成果を得た。 1.両種の個体群動態を把握した。アサリ稚貝の生き残りは前年度よりよくなったが、新規加入は減少した。2.サキグロタマツメタの採集個体数は場所により大きく異なっていた。地震後アサリ漁を行っていない福島県相馬市の松川浦では、個体数が増加し、地震後はじめて一斉駆除が行われた。3.サキグロタマツメタの穿孔痕のあるアサリの割合は優占する貝類に比して高いわけではなくアサリの割合が高かった。このことから、外来生物のサキグロタマツメタは地震後、一時的に個体数は減少したが、その後は場所により個体群動態は異なっていることが明らかになった。また、アサリ資源への影響は地震後も続いていると考えられる。4.東京湾での調査の結果、サキグロタマツメタと外来種の二枚貝ホンビノスガイの分布域は2014年までは重なっていないことが明らかになり、両者は未だ捕食・被食関係にはなっていないと考えられた。しかし、飼育実験の結果、サキグロタマツメタはホンビノスガイを捕食することが複数示され、今後分布域が拡大した場合には外来種による外来種の捕食が現実化すると思われる。ホンビノスガイは漁業対象種となっており、今後も調査の継続が必要と考えられる。
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