研究課題/領域番号 |
23580266
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
朝比奈 潔 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (10147671)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 鯨類 / 胎盤 / 濾胞刺激ホルモン / FSH / cDNA / 全長塩基配列 |
研究概要 |
平成23年度はバンドウイルカ胎盤性濾胞刺激ホルモン(FSH)のFSHβサブユニットcDNAの全長を決定し、その動態について明らかにすることを目的とした。和歌山県太地町での追い込み漁で捕獲された個体より得た胎盤組織および下垂体よりmRNAを抽出し、cDNAを合成してRACE法によりFSHβ mRNAの全長配列を決定した。また、その遺伝子数と構造を明らかにするため、バンドウイルカのゲノムデータベースを用いてFSHβ遺伝子の検索を行うとともに、腎臓からゲノムDNAを抽出し、genomic PCRおよびbenomic southern blottingを行った。その結果、胎盤組織から5'非翻訳領域からpoly Aまでを含む481bpのmRNA全長配列が得られた。これは、下垂体で発言しているFSHβのそれと完全に一致した。ゲノムデータベースからFSHβ遺伝子を検索した結果、検出された遺伝子は1つだけであり、genomic PCRおよびbenomic southern blottingにおいてもこれを支持する結果が得られた。以上から、バンドウイルカにおいて下垂体と胎盤のFSHβは同一の遺伝子から発現することが示唆された。また、バンドウイルカのFSH遺伝子は他のほ乳類と同様に、3-エキソン 2-イントロン構造を持つことが明らかとなった。妊娠初期(胎仔長9.5cm)、妊娠中期(胎仔長59.9cm)、妊娠後期(胎仔長112.8cm)の3個体から得られた胎盤組織を用いて、FSHβのオープンリーディングフレームを増幅するプライマーを用いてRT-PCRを行った結果、いずれの妊娠段階の胎盤組織でもFSHβの発現が認められた。抗イヌFSHβ抗体を用いた免疫組織化学染色では、下垂体と胎盤組織において陽性反応が認められたが、反応は母体側の胎盤に比べ胎児側の胎盤ではるかに強かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2010年までに得られたバンドウイルカ胎盤を用いて、ほ乳類の胎盤で初めて、濾胞刺激ホルモン(FSH)の存在と発現を明らかにした。また、この胎盤性FSHは下垂体と同一の遺伝子から発現していること、また、母体側胎盤組織にくらべ、胎児側胎盤組織で顕著に分泌されている可能性が高いなど、その機能に対する新たな知見や手がかりが得られた。しかしながら保存中の胎盤組織からは、タンパク質としてのFSHを明瞭に検出、精製、単離するまでにはいたらなかった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の結果を踏まえ、2012年1月に新たに採取した胎盤、下垂体組織を用いて、バンドウイルカ濾胞刺激ホルモンをタンパク質として単離・精製し、特異抗体を作製してFSH則定系を構築する。黄体形成ホルモンについても、同様に則定系を構築したい。また、これまで得られた結果を論文として公表する。FSH受容体についても研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
高速液体クロマトグラフィーによるホルモンの分離用に、新たにカラムオーブンを購入する。また、抗体作製は外部に委託する予定である。
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