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2012 年度 実施状況報告書

CD34を用いたイルカ造血幹細胞の単離同定および造血器官の特定

研究課題

研究課題/領域番号 23580267
研究機関日本大学

研究代表者

伊藤 琢也  日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (20307820)

キーワードイルカ / CD34 / 分離 / 造血幹細胞
研究概要

CD34は造血幹細胞および血管内皮細胞に発現する膜貫通型の糖蛋白質で、生理学的な役割は十分解明されていないが、ヒトや多くの哺乳動物種の造血幹細胞や内皮細胞マーカーとして広く用いられている。CD34に関する研究は陸生哺乳類においては数多く報告されてきたが、海生哺乳類においては著しく少ない。そこで本年度は、イルカ末梢血からのCD34陽性細胞の効率的な濃縮および分離法について検討した。
まずイルカの末梢血から分離した単核球細胞(PBMC)分画より、前年度に作製した抗イルカCD34抗体を用いた免疫磁気細胞分離法(MACS法)によって得られたCD34陽性細胞分画(ポジティブフラクション)をフローサイトメトリーによって評価したところ、全細胞カウント数に対するCD34陽性細胞の割合は、PBMCで1.8 %、ネガティブフラクションで1.7 %であったのに対し、ポジティブフラクションでは全体の12.3 %と、約7倍に濃縮されていた。またサイトスピン標本に免疫組織化学染色法を施したところポジティブフラクションでは、ネガティブフラクションと比較してCD34強陽性細胞の割合が増加していることが確認できた。
以上、本研究で作製した特異抗体を用いてイルカ末梢血からCD34陽性細胞を濃縮して分離する方法を確立した。今後分離されたイルカCD34陽性細胞の増殖能測定および機能解析が期待される。またイルカの体内においてCD34の発現がどのように分布するか、解析する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的の1つであるイルカ造血幹細胞を含む細胞分画を末梢血から濃縮して収集する方法が確立できたため。すなわち、前年度に作製したイルカCD34分子に対する特異抗体を用いて、採取が容易な末梢血に存在する僅かなCD34陽性細胞を免疫磁気細胞分離法(MACS法)によって高率に濃縮する方法を確立できた。次年度は、確立したMACS法によって濃縮・分離したCD34陽性細胞が造血幹細胞としての機能である増殖・分化能を有するか検証することが期待できる。

今後の研究の推進方策

前年度までに確立したMACS法で濃縮・分離した細胞分画を用いて、イルカの造血幹細胞候補であるCD34陽性細胞が、造血幹細胞の機能を有するか、すなわち活発な増殖能と多分化能の有無を確認する。イルカのCD34陽性細胞を軟寒天培地で培養し、増殖細胞のコロニーを形態学的に観察するCFUアッセイによって、自己増殖能と各種血液細胞への多分化能を評価する。また、CD34陽性細胞およびCFUアッセイでのコロニー形成細胞群における転写因子の遺伝子発現を確認することによって、造血幹細胞特異的な遺伝子発現パターンを示すか実証する。抗イルカCD34抗体は、臓器全体に存在する血管内皮を認識するので、組織切片上のCD34陽性細胞が全て造血幹細胞であると断定できない。そこで、前年度に得られたCD34陽性細胞(造血幹細胞)を抗原として、イルカ諸臓器の他の細胞には反応せず、造血幹細胞のみに反応する特異的モノローナル抗体の作出を試みる。
個体発生学的または系統発生学的に造血が営まれている候補器官である脾臓、腎臓、肝臓等を中心に、イルカの全身諸臓器において、特異抗体を用いた免疫組織化学染色を行い、造血幹細胞やニッチ細胞の存在を証明する。なお、抗イルカ造血幹細胞特異抗体が作製できなかった場合には、既知のCD34等のマーカー遺伝子群の発現パターン解析や、標的臓器の髄質における未分化血液細胞や造血像の電子顕微鏡観察によって造血器官を同定する。

次年度の研究費の使用計画

イルカCD34陽性細胞の濃縮に不可欠な細胞分画用試薬を購入する。またイルカCD34陽性細胞の単離およびモノクローナル特異抗体作製に必要な試薬として免疫磁気細胞分離法(MACS)付属試薬、幹細胞培養のための専用培地や増殖因子などの添加試薬、ウシ胎児血清等の薬品を購入する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Cloning and characterization of bottlenose dolphin (Tursiops truncatus) interleukin-102013

    • 著者名/発表者名
      Segawa T, Karatani N, Itou T, Suzuki M, Sakai T.
    • 雑誌名

      Vet Immunol Immunopathol.

      巻: 154 ページ: 62-67

    • DOI

      10.1016/j.vetimm.2013.04.009.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Characterization of the circulating serum amyloid A in bottlenose dolphins.2013

    • 著者名/発表者名
      Segawa T, Otsuka T, Itou T, Suzuki M, Karatani N, Sakai T.
    • 雑誌名

      Vet Immunol Immunopathol.

      巻: 152 ページ: 218-224

    • DOI

      10.1016/j.vetimm.2012.12.006.

    • 査読あり
  • [学会発表] 全身循環するイルカのserum amyloid A(SAA) isoformの特性

    • 著者名/発表者名
      瀬川太雄、伊藤琢也、鈴木美和、長塚信幸、酒井健夫
    • 学会等名
      第154回日本獣医学会学術集会
    • 発表場所
      岩手大学
  • [学会発表] ハンドウイルカIL-10の発現解析およびラクトフェリンによるその調節

    • 著者名/発表者名
      唐谷なな、瀬川太雄、伊藤琢也、鈴木美和、長塚信幸、酒井健夫
    • 学会等名
      第154回日本獣医学会学術集会
    • 発表場所
      岩手大学

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公開日: 2014-07-24  

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