研究課題
ラビリンチュラ類の現存量変動と構成種の季節的遷移について考察することを目的に,兵庫県西宮市の夙川河口域,大阪湾奥,大阪湾中央の3つの定点で,細胞数計測による現存量変動の把握と構成種の解析を少なくとも毎月1回行った。現存量変動では,春から夏にかけて,1つあるいは2つの大きな細胞数の極大(Thraustochytrid Spikes)が隔年でみられることを初めて明らかにした。栄養源となる降雨による陸源有機物の供給と,海水温度の上昇に伴うラビリンチュラ類の活性化が,これらの極大を形成する原因と推察された。河口域の現存量は大阪湾に比べて10倍以上であることが示され,河口域でホットスポット的に生息していることが示された。海洋生態系におけるエネルギー転送において,動物プランクトンへの影響力は,バクテリアの16%以上となることが予想され,無視できないレベルと判断された。構成種については,サンプリングごとに少なくとも5株を分離して,それらの18S rDNA系統解析から同定を行った結果,9の主要な系統群を認識することができた。これらの系統群の出現時期は基本的に決まっており,季節的遷移が起こっていることが示された。また,系統群ごとの温度特性が季節的遷移を起こす原因である可能性と,塩分特性によって棲み分けが起こっている可能性を示唆した。さらに,最終年度では,各サンプルの溶存および懸濁態炭素量を計測し,ラビリンチュラ類の増減には,比較的,懸濁態炭素量と相関がみられることを確認できた。最終年度では,特に,データ蓄積に成功した松花粉MPN法に加えて,Real time PCRによって検出される環境サンプル中のDNA量から細胞数を推定する方法の開発にチャレンジした。しかし,この方法では,DNA量が検出限界に近く,十分な細胞数推定が困難であることが示された。
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