研究課題/領域番号 |
23580271
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研究機関 | 木更津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
岡本 保 木更津工業高等専門学校, 電気電子工学科, 准教授 (80233378)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | スサビノリ / 蛍光分光 / 蛍光寿命測定 |
研究概要 |
今年度はスサビノリの蛍光寿命を検討した。まず初めに、スサビノリの生育診断に適している励起波長であるフィコエリスリンの吸収ピーク付近の470nmの励起光を用いて蛍光寿命測定を行った。測定した蛍光の波長はフィコエリスリンに起因する580 nm、アロフィコシアニンに起因する660 nm、クロロフィルaに起因する685 nm、720 nmの4つの波長である。それぞれのピークについて測定を行い、デコンボリューション処理により蛍光寿命を解析した。その結果、クロロフィルaによる蛍光(685 nm、720 nm)は、フィコエリスリン、アロフィコシアニンによる蛍光(580 nm、660 nm)に比べて、ゆるやかに減衰することがわかった。蛍光寿命を見積もると、フィコエリスリン、アロフィコシアニンが0.1 ns以下、クロロフィルaが1.4 ns程度であった。 次に、蛍光寿命の励起波長依存性を検討した。励起波長は470nmの他に、405nm、630nmを用い、685 nmのクロロフィル蛍光の蛍光寿命の測定を行った。その結果、5 ns以降で励起波長405 nmの場合は他の励起波長と比べてゆるやかに減衰しており、長い蛍光寿命の成分を含んでいることがわかった。720 nmのクロロフィル蛍光の蛍光寿命測定においても同様の結果が得られた。405 nmはクロロフィルaの吸収ピーク付近の波長であり、励起光を吸収する色素によってエネルギー移行の過程が変化していると考えられる。 各色素の蛍光寿命は各色素間でのエネルギー移行に関連していると考えられる。そのため、蛍光寿命は病害などのストレスの影響に対してより敏感に変化すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、主として蛍光寿命測定を試みた。その結果、各色素の蛍光寿命が明らかになってきた。各色素の蛍光寿命は各色素間でのエネルギー移行に関連していると考えられるため、蛍光寿命は病害などのストレスの影響に対してより敏感に変化すると考えられる。そのため、スサビノリの養殖管理技術として非常に有効な方法と考えられる。さらに、今年度は色素定量のために遠心機を購入したが、色素定量のための準備実験も順調に進んでおり、次年度以降に色素量と蛍光スペクトルの関係を明らかにする準備が整ったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度確立した蛍光寿命測定を用いて、病害等のストレスにより蛍光寿命がどのように変化していくかを検討する。また、フィコビリン蛍光の寿命は非常に早く、今年度の測定では正確な寿命が計測できていないため、短パルスレーザを使用してフィコビリン蛍光の寿命を正確に測定する。 さらに、色素定量の技術を確立し、色素量と蛍光スペクトルの関係を明らかにしていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、今年度購入した遠心機を利用して、色素定量技術の確立を目指す。そのため、購入する物品は主として薬品等の消耗品となる。 また、短パルスレーザを使用した蛍光寿命測定のために、信州大学斉藤教授のグループと連携して研究を進める予定である。そのため、成果報告のための学会出張の他に、研究打合せのための出張を計画している。
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