我々はこれまでに、あかぐされ病などの病害の影響により蛍光スペクトルが変化することを明らかにし、蛍光分光がスサビノリの生育診断に有効であることを明らかにしてきた。一方、各色素の蛍光寿命は各色素間でのエネルギー移動に関連していると考えられるため、蛍光寿命は蛍光スペクトルよりもストレスによる障害に対して敏感に反応すると考えられる。そこで、蛍光寿命計測によるスサビノリの生育診断を検討した。 時間分解能の高い測定を行うため、パルスレーザを用いて蛍光寿命測定を行い、平均寿命を計算したところ、正常なスサビノリの平均寿命は580 nmの蛍光ピークの場合で0.12 ns~0.19 ns、660 nmの蛍光ピークの場合で0.15 ns~0.17 ns、685 nmの蛍光ピークの場合で0.21 ns~0.22 ns、720 nmの蛍光ピークの場合で0.12 ns~0.13 nsとなった。 あかぐされ病に感染したスサビノリの蛍光寿命を測定したところ、あかぐされ病が進行するにつれて、平均蛍光寿命が長くなることがわかった。また、蛍光スペクトルではほとんど変化が見られないような初期のあかぐされ病の場合でも、平均蛍光寿命は大きく変化しており、蛍光寿命測定が蛍光スペクトル測定より感度の高い生育診断法であるという見通しを得た。
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