研究課題/領域番号 |
23580273
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
奥澤 公一 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所, 主幹研究員 (00211813)
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研究分担者 |
風藤 行紀 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所, 研究員 (60399996)
玄 浩一郎 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所, 主任研究員 (80372051)
田中 秀樹 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所, グループ長 (00372029)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 生殖腺刺激ホルモン / 濾胞刺激ホルモン / 黄体形成ホルモン / ラジオイムノアッセイ / マダイ / 初回成熟 / puberty |
研究概要 |
脊椎動物の2種類の生殖腺刺激ホルモン(GTH)、すなわち濾胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)は、配偶子形成を制御する重要なホルモンであるが、魚類では両ホルモンの測定が可能な魚種がごくわずかであり、その分泌制御に関する知見が乏しい。そこで、23年度は生殖内分泌に関する知見が豊富なマダイについて両ホルモンのRIAを開発し、マダイ成魚の血中濃度の季節変化を調べることを目的とした。マダイのFSHβ鎖およびLHβ鎖をコードするcDNAとウサギの共通糖タンパクホルモンα鎖をコードするcDNAを連結し、293細胞で発現させて組換えキメラFSHおよびLHを作製した。これらを家兎に免疫して得た抗血清とマダイ脳下垂体から精製したFSHおよびLH標品を用いてRIAを開発した。FSHのRIAでは、マダイ脳下垂体抽出液の希釈系列は標準品の希釈系列と平行になった。マダイLHをほとんど認識せず、FSHとの交差率はB/Bo=50%となる濃度の比較で1.1%であった。また検出限界は0.8 ngであり、マダイ血液中のFSH濃度測定が可能であった。一方、今回開発したLHのRIAは測定感度が十分ではなかったため、過去に開発した精製マダイLHのRIAを使用することとした。自然条件下で飼育したマダイから毎月採血し、血中FSHおよびLH濃度をRIAで測定した。雄の血中FSH濃度は産卵期前の3月から上昇し、産卵期の4月に最高値となった。一方、雌の血中FSH濃度の変化は顕著でなかった。血中LH濃度は雌雄とも産卵期をピークとする季節変化を示した。これらの結果は以前に調べられたマダイ脳下垂体中のFSHβ、LHβ両鎖のmRNA発現量の季節変化に対応していた。本年度の研究により、次年度以降に実施するマダイのGTH分泌制御機構研究の準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおりにウサギ共通糖タンパクα鎖とマダイGTHβ鎖からなる組換えキメラタンパクの作製に成功し、特異抗血清の作製も予定通り実施できた。FSHに対する抗血清はラジオイムノアッセイ(RIA)の開発に適したものであったが、LHに対する抗血清は力価が低く、LHのRIAを構築したが検出感度が十分ではなかった。しかしLHについては過去にマダイ脳下垂体から精製したマダイLHとその特異抗体を用いたRIAを開発済みであったため、このLHのRIAを測定に使用することで今後の研究を支障なく進めることができる。今年度の研究によりマダイにおける血中のFSHとLH濃度には季節変化が認められ産卵期に高くなることが明らかとなり、さらに血中FSH濃度に雌雄差が認められた。これは過去に実施したマダイ脳下垂体におけるFSHおよびLHの遺伝子発現の結果と類似していた。これらのことから、今回作製したRIAは生理的なGTH濃度の変動を検出するのに十分であることが確認された。以上の様に研究はほぼ計画通り進捗した。
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今後の研究の推進方策 |
23年度に開始した、1歳魚の定期的なGTH濃度および成熟度の調査を継続する。23年度から収集した試料のFSHとLHの分析を行い得られたデータから、マダイの初回成熟におけるGTHのプロファイルの特徴を明らかにする。初回成熟前のマダイにGnRH、ドーパミンおよび性ステロイドホルモンを単独または組み合わせて投与し、GTHの合成と分泌に及ぼす影響を調べる。GTHの合成は脳下垂体中の含量、分泌は血液中の濃度を測定することで評価する。GTH投与によるマダイの人為的な初回成熟誘導(春期発動期の誘導)を試みる。そのために必要となるGTHを得るため、マダイのFSHおよびLHの発現ベクターを構築し、ほ乳類の培養細胞に導入して発現、分泌させる。培養上清よりFSH、LHを精製する。初回成熟前の1歳程度のマダイに対して23年度に解明したFSHとLHの分泌動態を参考にして、作製した組換えFSHとLHを投与し、さらに必要に応じてGnRHやドーパミンの拮抗剤なども投与して性成熟を誘導する。血液中の性ステロイドホルモン濃度、生殖腺の発達状況などによりホルモンの効果を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、GTHやステロイドホルモンのラジオイムノアッセイ用のラジオアイソトープなどの試薬、組換えホルモン作製のためのPCRなど分子生物学実験の試薬、細胞培養の培地および形質転換用試薬、組織学用試薬などの試薬類、実験用プラスチック器具類、実験補助の契約職員雇用のための賃金、学会発表のための旅費および論文投稿のための費用に使用する予定である。
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