• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

生殖腺刺激ホルモンによるマダイの初回成熟機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23580273
研究機関独立行政法人水産総合研究センター

研究代表者

奥澤 公一  独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所, 主幹研究員 (00211813)

研究分担者 風藤 行紀  独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所, 主任研究員 (60399996)
玄 浩一郎  独立行政法人水産総合研究センター, 西海区水産研究所, 主任研究員 (80372051)
田中 秀樹  独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所, グループ長 (00372029)
キーワード生殖線刺激ホルモン / 濾胞刺激ホルモン / 黄体形成ホルモン / マダイ / ラジオイムノアッセイ / 初回成熟 / puberty
研究概要

2011(平成23)年10月に開始したマダイ1歳魚の定期的な性成熟調査を2012(平成24)年10月に完了し、収集した血漿および脳下垂体中のFSHおよびLHの濃度を昨年度開発したラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した。調査した満1歳から2歳のマダイは、卵巣を持つ雌個体と精巣または両性生殖線を持つ個体に分かれたので、雌個体と雄ないし雌雄同体個体(以後便宜的に雄と記す)に分けて解析した。雄の血漿中のFSHおよびLH濃度は産卵期(4月および5月上旬)と8月に高い傾向が見られた。雌では血漿FSHは顕著な変化を示さず、血漿LHは雄と同様に産卵期と8月に高い傾向があった。雄の脳下垂体中のFSH含量は1歳の10月から4月まで上昇し6月に低下した後再び8月に高値を示した。一方脳下垂体LH含量は2、3、4月に高く、それ以外の月は低かった。雌の脳下垂体中のFSH含量は雄に比べて1/2から1/13程度と低く顕著な変化は見られなかった。LHについては雄同様2月から4月に高かった。
産卵期に雄の血漿および脳下垂体中のFSHとLHおよび雌のLH濃度が高いことは性成熟にともなう両ホルモンの産生および分泌の高進と考えられるが、産卵期が終了して3ヶ月ほどたった8月に血中ホルモン量が高くなることに関してはその生理的意義やメカニズムは不明であり今後さらに解明が必要である。
初回成熟前の1歳の雌雄マダイにGnRHのアゴニストを投与し、FSHとLHの分泌に及ぼす影響を調べた。投与7日後に血漿中と脳下垂体中のGTH濃度を測定したところ、雌雄とも血漿中のLH濃度は顕著に上昇し脳下垂体中のLH濃度は顕著に低下した。一方、FSH濃度は血漿中、脳下垂体中ともに変化が見られなかった。このことからGnRHはLHの分泌は促進するがFSHに対する分泌促進作用は持たないことが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

昨年度までの研究により、マダイの初回成熟過程における血液中と脳下垂体のGTHの変動が明らかになり研究目的の一つは達成された。しかし、血液中のFSHとLHの変化は想定していたよりも小さく、また配偶子形成に伴って産卵期前から上昇するというはっきりした傾向はつかめなかった。そのため目的に掲げた「初回成熟過程における2種のGTHの役割を推測する」ことが難しい状況になった。
マダイGTHの分泌制御機構については、従来の知見のようにLHはGnRHにより顕著に分泌が促進される一方、FSHはGnRHによる分泌促進を受けないことが明瞭になった。この成果はFSHの特異的な測定系が開発されてはじめて明らかになった点であり学術的に価値が高い。GnRH以外の因子(ドーパミン、ステロイド)については未検討なので今後取り組む必要がある。
生理活性のある組換えFSHとLHを作製しこれらを用いた投与実験を行う課題については現在組換えホルモン作製用のベクターを作製している段階であり若干進捗が遅れている。今後研究を加速して目標達成を確実にする必要がある。

今後の研究の推進方策

これまでの研究により、FSHの動態の雌雄差が明瞭に示された。すなわち雌の脳下垂体FSH含量が雄に比して著しく低く、また血中FSH濃度の変化も小さいことから、「マダイ雌ではFSHが必要ない」という仮説を雌へのFSH投与実験などで検証する。一方雄については幼時雌雄同体から完全な雄への性分化過程も含めた初回成熟過程にFSHがどのような役割を担うかという点をFSHの投与実験などにより解明していきたい。
GTHの分泌制御については昨年度に引き続き初回成熟前のマダイにGnRH、ドーパミンおよび性ステロイドホルモンを単独または組み合わせて投与し、GTHの合成と分泌に及ぼす影響を調べる。
またGTH投与によるマダイの人為的な初回成熟誘導(春期発動期の誘導)を試みる。このために必要となるGTHを得るため、マダイのFSHおよびLHの発現ベクターを構築し、ほ乳類の培養細胞に導入して発現、分泌させる。培養上清よりFSH、LHを精製する。
初回成熟前の1歳程度のマダイに対して、作製した組換えFSHとLHを投与し、さらに必要に応じてGnRHやドーパミンの拮抗剤なども投与して性成熟を誘導する。血液中の性ステロイドホルモン濃度、生殖腺の発達状況などによりホルモンの効果を調べる。

次年度の研究費の使用計画

研究費は、マダイを飼育するための飼料、GTHやステロイドホルモンのラジオイムノアッセイ用のラジオアイソトープなどの試薬、組換えホルモン作製のためのPCRなど分子生物学実験の試薬、細胞培養の培地および形質転換用試薬、組織学用試薬などの試薬類、実験用プラスチック器具類、実験補助の契約職員雇用のための賃金、学会発表のための旅費および論文投稿のための費用に使用する予定である。

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi